【スタレ】『開拓日記』 (ページ3)

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ホテル・レバリー内を彷徨いていると、ちょうど見知った顔を視界の端に見つける。折角だから声を掛けよう、と彼女の方へ近付けば、僕の気配にいち早く気付いたのか、声を掛ける前に彼女は視線を落としていた携帯から顔を上げた。すかさず僕は顔に笑みを貼り付ける。

「やぁA、良いところに。少し運試しでもしないかい」

『ん、アベンチュリン。良いけど…突拍子も無いの、相変わらずだね?』

彼女は僕の存在にも提案にも特に驚きを見せる事は無かったが、何か良い事でもあったかの様に、ふわ、と花が綻ぶ様に微笑った。

「そう?…でも、そういう君も相変わらずだね。内容も聞かずに僕の誘いに乗るなんてさ」

ソファに座る彼女を見下ろす形で立ったまま応えれば、彼女はポンポンと自身の腰掛けるソファの横の空いたスペースを叩いた。座って、と視線で訴えかけられる。特に断る理由も無いので、それに従った。そうして僕が座るや否や、彼女はズイ、と僕に顔を近付けた。

『信頼してるからね、貴方のこと』

彼女の凛とした声はただでさえ耳に届きやすいのだが、その声が一段と大きく主張してくるものだから思わず圧倒されそうになる。

「…君って変わってるよね。僕は信頼とは縁遠い存在だと自負していたんだけど」

『初めに、「僕のことは好きなように利用してもいいし、裏切ったって構わない」って言ってくれたからね。それが裏返しの意味であっても、本心を混ぜて言ったんだとしても、貴方のその言葉は信じるに値する、って私は思ったから』

「信じるに値する根拠がよく分からないし、なんで利用と裏切りの話で君の信用を得られたのか謎のままだけど。…まぁ良いや。何にせよ、退屈凌ぎに付き合ってくれるのは有り難いからね。感謝するよ」