【スタレ】『開拓日記』 (ページ13)

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『えっ、私物…?』

「全く、そんな目で見られるなんて心外だなぁ。僕は"そういった"趣味も性癖も持ち合わせていないよ」

…本当に彼女は顔に出やすい。

表情を取り繕う意味など無い世界を生きている＿本心を隠す必要が無い生活を送っている＿からだろうか。それにしたって、純粋で無垢で正直で…まるで、子供みたいだ。

運試しでは彼女なりに頑張っていたのだなと、改めていじらしさを感じつつ、意識を現実へ引き戻せば、彼女が納得した様に頷いている。どうしたのか問えば、思わぬ答えが返ってきた。

『人それぞれだもん。隠さなくても、私は受け入れるよ』

「…へぇ、流石だね。僕の友人は随分と寛大な心をお持ちのようだ。けど大丈夫、隠してもいないから」

少し語気を強めて言う。

他の誰かに僕の事を誤解されるのは別に構わない。むしろ僕のプライベートを"知った気でいる"ままにさせる、という手を使うこともあるぐらいだ。「貴方の情報を掴んでいる」と悦に入って"分かった気でいる"者ほど、扱いやすい駒(チップ)はない。

だが、彼女の誤解を解かぬまま接し続けると、後々厄介な事になる可能性が高いと僕の勘が告げていた。

「ただ単に、こういう時の為に用意していたものだよ。他意は無い」

彼女からの更なる追撃が来る前に、端的に伝える。そして、間髪入れずに言葉を続けた。

「ただ、少なくとも事が終わるまではその服、破いたりしないように。第一印象は肝心だ。身に纏っているモノも、その人を印象付ける要素の1つだからね」

『……確かに』

彼女は何か言いたげにしていたが、僕を見て納得したようだった。

「改めて確認だけど。これから1時間、君は僕の命令に従う他無い。残り時間もあまり無いから、詳細は終わってから話すよ。とにかく僕に合わせてくれれば良い。…エスコートは僕に任せて。さぁ、お手をどうぞ、お嬢さん?」

恭しく手を差し出せば、その手に自分の手を重ねて、クスリと彼女が笑った。

『運試しの時から思ってたけど、何か…紳士的なアベンチュリンって、変な感じ』

「これは手厳しいな。似合うよう努めるよ」

そう言いながら彼女の手を引いて、ネオン煌めく眠らない街の奥へと入り込んでいった。