【名探偵コナン】気紛れ［赤井秀一］〔短編集〕 (ページ32)

今日:30 hit、昨日:6 hit、合計:62,348 hit

Ep.1-2 ページ32

いつものように授業をサボってこの空き教室へ向かうと、
床に座って壁に背をつけ、腕を組んで目を瞑る彼が居た。

何処かで見かけた様な気がして顔を近づけると、
偶然目を覚ました彼と瞳がかち合った。

「……誰だ。」

刺す様な視線を向けられて萎縮する。

おずおずと名を口にした。

『……2年のAです。』

「下級生か。…俺は3年の赤井秀一だ。
ところで君、授業は良いのか?」

凛とした真っ直ぐな瞳が此方を覗く。

『……だ…大丈夫です。少し此処に用があって…。』

「ほぉー…なるほど。」

『……そういう先輩は良いんですか?』

「俺は必修科目以外する事も無いんでね。」

彼はこの空き教室を見回して、
Aの服装や持ち物を確認した。

「どうせなら仮眠でも取ろうかと思ってここへ来たが、
______お邪魔だったかな?」

『いえ、……別に。』

「…そうか。なら少し寝かせてくれ…此処の住人さん。」

そう言って、彼は片方の口角を上げた。

その言葉を受け、驚いて目を見開く。

「何で気付いたのか、という顔だな。
…なぁに、簡単な事だ。」

彼は横目で此方を見ながら、教室を見渡した。

「棚は割と埃っぽいのにやけに床だけ綺麗な場所があるし、
特に重要な資料や物も無いのに君は迷わず此処に来た。」

彼はAが確認した時、目は瞑っていた様だが、
まだ眠っていたわけではなかったらしく、
「足音が一直線にこの教室に向かっているのが聞こえてね」
と付け足した。

「それに、俺に気づいた割に騒がないという事は…、
この場所が気づかれて欲しくないと思っているということ。
何故なら、常日頃から利用しているから…違うか?」

『……凄いですね。』

感嘆の声を上げると、
「それほどでもないが」と謙遜が返ってきた。

「そもそも何も無い空き教室に
その鞄を持って入ってきた時点で何となく察しはつく。」

『…先生に言いますか?』

「…逆にどうしてその必要があるんだ?
君の意思で此処に居るのなら咎める事も無いだろう。
何より、…面倒事は嫌いなんでね。」

彼はそう言って口元を緩めた。