【名探偵コナン】気紛れ［赤井秀一］〔短編集〕 (ページ12)

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Ep.1-5 ページ12

「おい…流石にそろそろ怒るぞ。」

彼の額には幾つかの筋が入っていた。

それで怒りを抑えているつもりなのだろうか。

『怒れば?嫌いな奴に何言われたって何とも思わないし。』

は、と嘲るように乾いた笑いを付け足した。

「あぁ、そうか…なら君の要望に答えるとしよう。」

ス、と息を吸い込んで、言葉を続けた。

「会えばすぐ嫌悪感を訴えてくるし、
女性らしからぬ口の悪さだ…流石の俺も嫌気がさす。
うん、そうだな…俺は2度と君の前に現れないと誓おう。
___お前と居続けるのは耐えられんからな。」

言うだけ言って彼は薄ら寒い笑みを浮かべた。

初めて言葉にされて、何かがぷつん、と切れた。

『……それが聞けて安心した。
ありがとう、___コレで嫌いなままでいられる。』

俯いて、口角を上げた。

彼の言葉の1つ1つが心に突き刺さった。

でも、面と向かって酷く言われた方が、
彼への淡い想いが吹っ切れる気がしたのだ。

「あぁ__なら何よりだよ。」

よく表情は見えなかったが、Aが笑ってる様子を見て、
やはり君は心底俺が嫌いなのだな、と理解した。

そのまま立ち去ろうとして、ふと肩が震えている事に気づく。

「…おい、待て。君、まさか___。」

顔に手を伸ばそうとする彼の腕を払い退けた。

『近寄らないで…っ!』

顔を上げ、キッ、と睨み付けた反動で涙が頬を伝った。