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顔を上げると、目の前には美勇人くんの顔がある
美勇人くんが瞬きをすると一滴の雫が
ﾂｰ っと頬を伝って私の顔に落ちてきた
｢美勇人くん、｣
｢ごめん、婚約するのに、｣
｢婚約なんてしなければいいのよ｣
｢……っ、それは出来ない｣
｢なら、どうして、、、泣いてるの｣
｢わかんないや｣
美勇人くんは白い歯を見せて優しく微笑んだ
｢Aはもっといい男と幸せになれってことなんだよ｣
｢やだ、美勇人くんがいい、｣
｢ううん、俺なんかよりもっといい人がいるよ｣
｢そんな人なんていない！……私は、美勇人くんが｣
｢だめだよ、A。婚約するんだよ｣
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“婚約” たった一言のはずなのに身体の至る所に響いて、
そこが麻痺したように感じて、
耳も頭も心も……全てが痛かった
好きなのにどうして、離れなきゃいけないのか
好きなのにどうして、一緒にいれないのか
何度も何度も問いかけようとしたけど
誰に問いかけていいのかが分からなかった
現実を受け止めるのが辛かった、苦しかった
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……逃げ出したかった
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｢なら、好きって言って｣
｢A……｣
｢私は好きよ、好きすぎて胸が苦しいわ｣
｢ごめん｣
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最後の最後まで美勇人くんは
好きだ 、と言ってくれなかった
なのに、美勇人くんから私を離すことはなかった
美勇人くんは情の深いの人だった
婚約者に対しても、私に対しても……
その情が時に苦しみに変わることもあった
でも、そんな所を含めて
全てが大好きだったよ、
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どうか、私を忘れないで……
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勿忘草
花言葉⋮真実の愛 私を忘れないで
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作者名：しゅあ | 作成日時：2018年12月2日 1時
