過去という名の光。Ⅱ (ページ1)

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｢A…｣

｢顕嵐っ…わたし…｣

｢なんも言わなくていいから｣

周りの目など気にせずに顕嵐は道で座り込む私を優しく包み込んだ。

｢もう、ホテル行こっか｣

｢…顕嵐、ごめんね、｣

｢大丈夫、まだ2日もあるから｣

旅行の貴重な1日目を私のせいで無駄にしてしまった。

｢明日はどこ行こっかー｣

何にも触れてこない顕嵐の優しさが今の私には辛かった。

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隣のベットで寝ている顕嵐を起こさないようにそっとベットから降りる

シンガポールの夜景が一望できるこの部屋も顕嵐がとってくれた。

ベランダへと足を進め、窓を開けて外に出る

この街のどこかに紫耀がいるんだ、

数時間前見て私が追いかけた人は、紛れもなく紫耀だった。

ずっと会っていなくても嫌なくらい覚えてる、
あの低くて優しい声と落ち着く紫耀の香水の匂い、
覚えてるんじゃなくて、忘れられないんだ。

いつの間にか紫耀に依存していた自分が怖かった。

｢紫耀…｣

溢れてきた涙は自分の意思で流れてきたものじゃなかった。

泣きたくないのに泣いちゃう、自然現象。
心がそれを、紫耀を求めてるってこと。

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