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「俺達も見捨てませんよ、絶対」
「ちゃんと自分たちのことしっかりして、合間縫って病院に来よう」
「なんせあの伊沢拓司が気に入った子だからね」
彼等は優しかった。
あの日、俺が勝手に通い始めたのに誰1人として否定はしなかった。
そしていつ起きるかも分からない彼女の為に、俺もメンバーも前よりも長い時間病院に通い詰めることが増えた。
「ねえ！聞いてよ！今日また伊沢さんがさぁ！」
渡辺は撮影や事務所で起きた事が随時起きる度に彼女に報告しているらしい。
渡辺が来る日は病室は賑やかになると看護師は言った。
「いや〜大学の授業難しすぎ。でも面白いんだよ超伝導！Aちゃんも一緒にやろう、な！？」
須貝は研究報告をしているらしい。
寝ている彼女に授業をしているかの様に超伝導を熱弁していると聞く。
「いやだからこうすれば早いじゃん」
「いや、其れは福良さんがやるからっすよ」
「川上は計算早いんだから出来るって」
福良と川上は毎回数字やパズルの事を話していると聞いた。一回、経過を見に来た看護師に気付かず机の上を数字で書いた紙でいっぱいにして討論してた時は頭が痛くなったと苦笑いされた。
彼女が起きたら文系から理系に移そうと対策を練っているらしい。
そんな俺は何を話そうか毎回悩みながら行く。
息をしていない様に見えるが、しっかりと心臓は動いている事を機械は示す。
荷物を置き、窓辺に立って外を見る。
彼女が寝てしまってから青空を見ただろうかと考える。
「今日も彼奴等、オフィスでAちゃんの話で持ち切りだったよ。次は何話そうかって」
「君が寝てしまってから1ヶ月位経った。
この病室の扉を開ける度に笑って出迎えてくれる君がいるんじゃないかって期待してしまってる」
彼女はすぐ目覚めそうな規則正しい呼吸で眠りに付いている。病名にある眠り姫とはこの事だろう。
俺は右手で彼女の頬を優しく撫でた。
それでも呼吸一つ変えずに眠りについている。
「俺は、君が…、Aの事が好きだ。
あの日からずっと、Aのことが、」
俺は生まれて初めて返事の無い告白をした。
俺が病室から退室した後、その答えなのか彼女の目から一筋だけ涙が流れ落ちたと聞いた。
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作者名：かおる | 作成日時：2021年9月19日 0時
