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「その油断が危ない目を起こすんですから!しっかり見てもらってください!!!」
と、渡辺航平に唆されて近くの大学病院に行く羽目になった、俺、伊沢拓司は不満顔で待合室で待っていた。
ただの少しだけ深い切り傷したが為に何故大学病院になんかと渡辺航平を少し恨んだ。
結果は数日したら良くなるそうで、縫う程では無いと言われた。少し安堵の息を漏らし大学病院を出た。
「おい、覚えておけよ」
「“大丈夫だったなら良かったですね”」
大学病院内にある少し広い庭、そこにあるベンチで主犯に電話を掛けていた時、俺の人生の中で大きな出会いが起きる事となった。
渡辺と電話をしていると、上から女の子の声がした。
「ん?」と声を発すると電話越しの渡辺は「どうしたんすか?」と当然の答えが返ってきたがその返答をしないまま「掛け直す!」と急いで電話切った。
まるで何処かで見た事のあるアニメだと思った。
ある作品で上から女の子が降ってくる、という描写がある。俺は今、その女の子を受け止める側になっていた。実際には降ってくるというか落ちてきた。
2階の病室があるような窓から、ジャンプして落ちてきた女の子をしっかり受け止めれば女の子は驚いた顔をした。
「っくりした」
『嘘…此処に人が居たの初めて…。
あ、あのごめんなさい!』
「いや、俺は大丈夫。怪我は無い?」
『は、はい…!驚かしてしまってごめんなさい…!』
入院患者だろうか、手首には入院している方がするタグが付けられていた。
20歳を越えているであろう女の子は、体型の割に痩せていた。
「えっと、」
『あ!今、担当医から逃げて来たんです!
助けてくださってありがとうございます!』
ではまた!と走り去ろうとしている女の子に最後名前だけでも、と俺は咄嗟に叫んだ。
「あの!名前…!!」
『佐々木!佐々木Aと言います、また会ってくださいね』
その子は名前だけ叫ぶと走って行ってしまった。
その後、医者や看護師が探し回っている声が聞こえた。
「またあの子は…!!」とすれ違ったら看護師が言ったのを聞き取った。
脱走常習犯なのだろう、とその言葉を聞きながらオフィスへの帰路へ着いた。
此れは女の子、佐々木Aとの出会いが俺の人生を大きく変える事となった、伊沢拓司の実録のお話。
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作者名:かおる | 作成日時:2021年9月19日 0時