嘘/の/す/ゝ/め/【歌い手】

番外編 ページ21

「君のいない誕生日」

12月1日0:00。Aが死んでから初めての俺の誕生日。色々あったけど、もう徐々に皆の傷も癒え始めてきた。



真っ先に届いたのはうらたんからのリプ。
相変わらず早いなぁ...と思いながら、返信を返す。



いつもなら、二番目に届くリプはAのハズだった。でも、二番目のリプはセンラさん。嬉しくないわけでは決して無い。センラさんに関しては一番にLINEで祝ってくれた。他にも祝ってくれる沢山のリスナーや歌い手仲間。愛されてるなととても感じる。


...でも。でも俺が一番欲しい相手からメッセージは来ない。それもそうだ。だってもう、この世にいないのだから。

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彼女がいない悲しみを紛らわすかのように、フユカちゃんに絡んだり、祝ってくれた歌い手仲間達に返信を送ったり、“志麻誕生祭2017”のタグが付けられた沢山のイラストやメッセージに目を通す。


途端、ﾋﾟｺﾝとなるスマホ。なんの通知だろうと見てみると、信じられないものだった。



“まーしぃへ「世界寿命と最後の一日」ver.yuki【ラスト投稿】”




「...A...？」




何も考えなくても自然と手は動画のURLをタップする。開くとニコニコ動画に、Aの歌ってみた動画。主コメを見た俺の目には涙が溜まる。



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“まーしぃへ 今年で28歳かな？お誕生日おめでとう‼お酒はほどほどにね〜！ずーっと元気でいてね。産まれてきてくれてありがとう。だいすき。”



“最後の投稿です。12/1投稿設定になっているハズ...コメ欄荒れないといいな。ごめんなさいよりありがとうが私は好きです”





もしも明日世界が滅ぶなら。
そんな一日前のお話。


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動画を再生すると流れる愛しい声。心地良くて嬉しくて会いたくて。止めどなく溢れる涙の止め方を俺は知らない。


一番最後に。伴奏をバックに、俺へのボイスメッセージが流れる。


「まーしぃHappyBirthday！おめでとう！まーしぃの笑顔と歌声がとってもとっても大好きだよ！幸せな一年になりますように！」



もう、無理。こんなん泣かへん方がおかしいで...？


やっぱり、Aが一枚上手で。Aが居なくて物足りなかった誕生日は、これまでで一番なくらいに最高な誕生日になった。






「まぁ、欲を言うなら逢いたいなぁ...」




誕生日だからといって、そんな願いは叶えてくれないんやけど。せめて、この呟きが空まで届いていれば。

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