嘘/の/す/ゝ/め/【歌い手】

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ネットでは本当にあった事実からやっていない嘘の事までどんどん“本当”として拡散されて知れ渡っていくから怖い。


目の前には、悲しそうな顔をしたA。こんな顔させてるんは紛れもない俺自身。俺からお見舞いに来てくれって言ったにも関わらず、いざAの顔を見ると涙が溢れて止まらない。


俺はストレスで倒れてしまった。そして病院でのうのうと暇して寝ている間に、何故かAが悪者にされて炎上していた。


皆はAをブロックしたり批判するようなツイートしたりしている。“何故”で思考が埋め尽くされる。


皆の言い分を見ていると、確かにな、と納得するものもあった。だけど誰が何と言おうと、あの時の言葉には救われた。嬉しかった。なのに。



「俺が弱かったから...ごめんなぁA...」



「な...んでまーしぃが泣くの？謝るの...？」


　
Aは優しいから、自分の言葉が余計だった。俺を傷つけた。とか思っているに違いない。だけど他人がどう俺の気持ちを勝手に考えようが、所詮妄想で。全く傷つけられてはいないのだ。


「まーしぃ。私は平気だから。まーしぃは明日に向かってまた歩いていく為に、こんな事で泣いてないで笑っていてよ。私なんかの為に泣かなくても、謝らなくても良いよ。ね？」




そう言うとAはぽんぽんと俺の頭を優しく撫でた。こうされるのが好きな俺はあの時と同じように目を細めてされるがままになる。



「やっぱりAといると安心するわぁ〜幸せやなぁ〜」


Aはちょっと驚いたようにしているけど、俺はAと居るととっても安心する。幸せなんだ。


だから、“私なんか”なんて言わんで欲しい。
しかも、“平気”なんて嘘、つかないで。



「ちゃんと食べないとアカンよ？」



頭を撫でられながらボソッと言った。前会ったときより確実に痩せている。ちゃんと食べれていないのは一目瞭然で。



「食べてるよ〜？だだ私が少食なだけ。」




(少食...だったか？)



少食にしても、おかしい。差し入れのフルーツでも一緒に食べようかと提案しようとしたその時、俺とA、二人きりの俺にとって最高の癒しの時間は壊された。





もう二度と、味わうことはない。

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