蘭くんはオトしたい【灰谷蘭】

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結局オレが連れ込んだのは、小洒落たカフェだった。






《 ───こういうカフェ、初めてきました 》






俺もだよ。
女と会うときはもっぱら直ホだったし。

あのままホテル連れ込んでぐっちゃぐちゃに抱き潰そうかと思ってたけど。






( ちゃんとオトしたい )






なんて、らしくなさすぎる。
竜胆が知ったら卒倒しそうだな。


洒落た内装をきょろきょろと見渡して
メニューを開いてはまた表情を明るくさせて、
聞いたこともないような横文字の羅列を指でなぞっていく。






《 これにします 》






ザッハトルテ。分からん。

オレはかろうじて分かるモンブランを選び
店員を呼んで２人分の注文をした。
ザッハトルテとカフェオレ、モンブランとブラックコーヒー。



待ってる間 そういえば、と思い出して
さっきの紙袋を彼女の前に差し出した。






『 ･･･？ 』






これ、なんですか？
言葉に出さなくても表情がそう語る。






〈 あげる。開けてみ 〉






そっと紙袋から取りだして、丁寧にラッピングを解いていく。

小さな箱から覗いた髪留めを見て、一段と表情が明るくなった。






《 これ、素敵だと思って買おうか迷ってたんです。
買い物に付き合わせてしまったのにいいんですか？ 》


〈 似合いそうだと思って。気に入ったならよかった。
久々に楽しかったしこれはそのお礼 〉


《 お礼するのは私の方なのに･･･
本当にありがとうございます 》






早速箱から出して付けている。

今まで 集ってくる女には適当にブランド品で黙らせる、なんてことばかりしていたけれど
たった数百円でこんなにも喜ぶ顔が見れるなら。







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