蘭くんはオトしたい【灰谷蘭】

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〈 名前教えて。俺、灰谷蘭 〉






助けるだけ助けてそのまま帰るつもりだったけど
なんか、この子とはもう少し話したい気になった。






《 枢木Aです 》


〈 苗字なんて読む？ 〉


《 くるるぎ、です 》






Aちゃん、な。
苗字聞いたけどそう声に出した。






〈 どっか行くとこだった？ 〉


《 友達の誕生日プレゼントを買いに。
でもこの辺りに詳しくなくて困っていたら
さっきのお兄さん達が声をかけてくれたんですが、
焦っちゃってメモとペンの存在忘れてました 》






どう見てもナンパだったけどな。
本人がそう思ってるならそれでいいや。






〈 どの辺行きたい？連れてくよ 〉






メモを見た瞬間、パッと表情を明るくしてまた暗くなる。






《 すごく有難いですが ご迷惑じゃありませんか。
お時間を頂くことになってしまいます 》






律儀っつーか堅いっつーか。ぜってー処女じゃん。






〈 いいよ、暇してたし 〉






たまにはこういう子とデートするのもいいよな。
セッ クス無しはつまんねえけど。






《 本当にありがとうございます。とても助かります！ 》






またさっきのクロスさせるようなジェスチャーも一緒に。


とりあえず雑貨屋を見たいらしいので
思い当たる詳しそうな女に連絡をとって良さげな店を聞いた。



いちばん近いトコから行こうか、と歩き出そうとして はた、と立ち止まる。
くい、と服の裾を引かれたから。

振り返れば、ハッとした表情で両手をあげて
まるでお手上げのようなポーズをとるAちゃん。






《 すみません、人と歩くときの癖で 》






ああ、なるほど。
聞こえないからついてきてるかわかんねえもんな。

あざとくないというか、狙ってないのがよくわかるから不快じゃない。


わたわたと落ち着きなく動かす手を取ってきゅっと握り、そのまま歩きだす。

しばらくはなにやら言いたげな様子だったけど
ちゃんとオレが理解したのをわかったのか大人しくなった。






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