蘭くんはオトしたい【灰谷蘭】

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ほんとに、ただの偶然。




ただ普通にコンビニ行った帰り、
なんとなくいつもは通らない道を通って。

アイス咥えたまんまフラフラ歩いてただけ。






( 眠みー･･･帰ったら昼寝しよ )






ふぁ、と欠伸をこぼして なんとなく向けた視線の先。

数人の男と それに囲まれる女がひとり。


別にいつもなら無視してた。めんどくせえもん。



ただ、本当になんとなく。気付けば体はそっちに向かってて。

まぁ普段人から恨み買うようなことしかしてないし
たまには人助けくらいしてもいいんじゃね、って。


よく見れば女のコ可愛いし。
そりゃナンパされるわって見た目。

横から掻っ攫ってこ、なんて思いながら近付いて、違和感を感じた。


オレとその集団の距離はもう１メートルもない。
なのに女のコの声は一切聞こえない。

男共がうるせーだけなのかと一瞬思ったが
どうやらそうではなく、何かわたわたと焦った顔をしていて。






( ･･･もしかしてあの子、 )






まあいいわ、ここまで来たし。






「 この子オレがもらってもいーい？ 」






集団の一人の肩に手を置いて声をかけた。

振り向いてオレの顔を確認した瞬間、青ざめてソイツらは逃げてく。






( やっぱオレちゃん有名人？ )






いろんなトコから恨み買ってるだろうしな。
心当たり多すぎてわかんねえけど♡


振り返って女の子の様子を窺った。うん、やっぱ可愛い。

何やらしきりに手をクロスさせるようなジェスチャーをとる。
やっぱり予想は的中したらしい。






「 耳、聞こえねえの？ 」






手話なんてできねえから、
自分の耳を指してから胸の前でバツをつくって首を傾げた。
なんとなくはわかんだろ。

どうやらそれでちゃんと伝わったらしくコクコクと頷いたかと思えば
ハッとした表情で肩にかけた鞄を漁ってる。






( 忙しい子だな )






聞こえない──つまり話せないぶん、表情が豊かなんだろう。


鞄から取りだしたのはメモ帳とペンで
スラスラとそれに走り書きして見せてくる。






《 ありがとうございます 》






綺麗な字でそう書いてある。
さっきのジェスチャーは “ ありがとう ” という意味なんだろう。


その手からメモとペンを受け取って同じように文を書いていく。






( やべ･･･字なんて普段書かねえからド忘れが酷ェ )







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