第一話 ページ3
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「兄上、行ってらっしゃいませ」
「んー」
「…兄上、行ってらっしゃいませ」
「あー」
「………兄上……」
玄関でかれこれ五分、兄上が私を抱きしめて離さない
私も女性にしてみれば身長は大きい方だと思うが、兄上は男性の中でも特に大きい方だ…そんな人に五分強も抱き締め続けられると、少しばかり苦しくなってくる
兄上の肩口に顔を埋める形となっている私は、そろそろ新鮮な酸素を欲していた
いよいよ我慢が効かなくなり、私はまるで壊れ物を扱うかの様に優しく腰に回されていた腕を軽く叩きながら、口を開く
「兄上、私も兄上とまた少しの間会えなくなるのは寂しいですが、これでは兄上が任務に遅れてしまいます!私と姉上方は何処にも行かずここで帰りをお待ちしていますから、どうか頑張って下さい!」
「………あー…んん……そうな、頑張るか」
「頑張って下さい兄上!」
「…おう!派手に暴れるぜ!」
「でもお怪我だけはなさらぬ様に!怪我して帰って来たら姉上方からきっつくお叱りを受けて頂きます!ド派手に!」
「はっはっは!そりゃおっかねえ…ま、大丈夫よ」
最後に私の頭に手を置いた兄上が、ニッと笑う
「ほら、お前らも来いよ」
私の後ろに向かって声を投げ掛けたかと思えば、私の体はいきなり押され、兄上に倒れ込む
慌てて離れようとするがそれは叶わず、後ろには姉上方が私を挟んで兄上に抱き着いていた
その上から、兄上がまた覆い被さるようにして抱き締める
ギュウギュウと苦しい
「んじゃ、行ってくるよ」
名残惜しそうに離れた兄上は、玄関から静かに出て行く
カシャンと音を鳴らして閉められた戸を一度開ければ、兄上はもう既にいなかった
「天元様あぁああぁあ!!」
「泣かないの」
須磨姉上が泣き出した所を、雛鶴姉上が宥める
まきを姉上はそれを見て呆れたようにため息を零し、私をひと撫でしてから居間に戻って行った
「…兄上、どうかご武運を」
体は、既に先程の温もりを欲していた
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Tomoka(プロフ) - 焦らしプレイだと?!グッ気になって毎日見てしまうぅぅぅぅ (2019年12月9日 23時) (レス) id: 902956a03c (このIDを非表示/違反報告)
2代目蒼桜 - 焦らしプレイなんて...嫌いじゃないわ!!! (2019年9月26日 18時) (レス) id: 3b6c9a1b80 (このIDを非表示/違反報告)
マモル(プロフ) - え、バチくそ気になるとこで「続く」だと?あぁん、、焦らすなんて、、、好きです← 続きが気になる終わり方最高。待ってる。 (2019年9月23日 23時) (レス) id: 58a48f54b9 (このIDを非表示/違反報告)
C吉(プロフ) - (´・ω・`)さん» コメントありがとうございます!!ほわほわさせんじゃねえ!!とか返したい所ですが、立場が違いましたね…ほわほわして下さって嬉しいです!!これからもほわほわして頂けるように頑張りますね!!本当にありがとうございます!! (2019年9月23日 14時) (レス) id: a20b0a3c58 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`) - ほわほわする… (2019年9月17日 20時) (レス) id: 03f6bf06e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:C吉 | 作成日時:2019年9月16日 17時