54.この鼓膜は､正しく揺れているのか｡ ページ15
今日は､いつにも増して身体が重い｡
最近は日に日に疲れが身体にたまって､抜けなくなってきている気がする｡
番組の収録や､CM､モデルの仕事｡
それにチームアップの打ち合わせのために色んなヒーローの事務所回って､そのついでにパトロール｡そして夜は……“敵連合”への潜入｡
特に“夜の仕事”はかなり神経がすり減ってなかなかキツイ｡だから俺はここ2週間､ろくに眠れずにいた｡
現在はその“夜の仕事”の帰り､もうすぐ夜明け｡
俺は流石に飛び続けて身体が辛くなってきて､一度一休みしようかと近くの鉄塔にとまった｡
ブーッ､ブーッ！
すると､タイミングよくポケットにある携帯のバイブが鳴った｡おそらくまた事務所のサイドキックさんからの連絡だろう｡俺は指を動かすのもだるい身体に鞭打って､のっそりと電話に出た｡
｢はーい､もしもーし｣
『うっわ､声ガッサガサ｡人間の声じゃないよ､
それ｡ちなみに番号はエンデヴァーさんが案外あっさり教えてくれたから』
｢……………え､｣
電話越しに聞こえてきたこの声は､幻聴だろうか｡
俺の身体は､石のように固まった｡
『あ､なにこれ今1番聞きたくない声じゃん｡
ばりいやだ､ばりだるい､ばり最悪､ばり幻聴であれ！とか思ってんでしょ？ふはは､私にはお見通しだ馬鹿野郎』
｢………いや､別にそこまでは…｡ていうか､その
“ばり”ってやつ……使い方結構違います｣
『うっさいなー､お前がいつもばりばり言ってたから移ったんです｡ていうか風の音聞こえるけど飛んでるの？なら切るけど｡飛行電話､ダメ､絶対！ね』
突然の電話｡しかも彼女から｡俺は彼女の声だと思った瞬間､彼女からの拒絶の言葉や失望の言葉がすぐに頭に浮かんできて､正直こわかった｡
自分勝手にも程がある｡
しかし､会話の始まりは以前のようにとはいかないが､少しぎこちない､くだらない軽口から始まった｡
少しホッとした自分が酷く憎い｡
｢いえ……止まってます｣
『おーけー｡なら早速なんだけど､ホークス｡
お前いつでもいいから私に会いにきて』
｢……は？｣
彼女の口からはもう二度とそんな言葉は聞けないと思っていた｡
むしろ､もう二度と彼女と会話なんてできないと｡
だから､俺はただただ困惑して､間の抜けた声を出すので精一杯だった｡
55.君がくれるモノを､どうしたら､君に返せるかな｡→←53.とある男と､とあるヒーローの独白
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そら(プロフ) - 昨日今日で一気見しました！叫びそうなほど良い作品うぃありがとうございます！！！お疲れ様でした (2020年7月28日 19時) (
レス) id: 8efb03cbb1 (このIDを非表示/違反報告)
ハイイロ(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます！そして今作品を最後までお読み頂き本当にありがとうございます｡Another story編作らせて頂きました！ぜひともそちらの作品もお楽しみ頂けたら嬉しいです！ (2019年9月15日 12時) (レス) id: 87fa6c3c8e (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - お疲れ様でした。とてもよい作品で、私が1番好きな作品でした。よければアナザーストーリーで2人のその後みたいなのが見たいです！お待ちしてます。 (2019年9月11日 17時) (レス) id: 96c851f2fd (このIDを非表示/違反報告)
ハイイロ(プロフ) - 刹鬼さん» コメントありがとうございます！そして今作品を最後まで読んで頂き､本当にありがとうございます｡最後にそう言って頂けてとても嬉しいです！ (2019年9月10日 21時) (レス) id: 87fa6c3c8e (このIDを非表示/違反報告)
刹鬼(プロフ) - 初コメ失礼いたします。そして、完結おめでとう御座います！読んでいると心がとても温かくなる最高の作品でした。お疲れ様です (2019年9月10日 19時) (携帯から) (レス) id: 363b2bec95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハイイロ | 作成日時：2019年5月1日 0時
