水で溺れ戀してしまった【free】 (ページ22)

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story 21．涙は胸の中に① ページ22

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誰も居ない涼し気な森に囲まれ

今にも光消えそうな街灯

足を引き摺り乍ベンチに座り溜息を零す

『怪我人に此処まで連れてきてスパルタね』

宗介｢俺はおぶってやるって言った筈だ｣

彼の肩に視線を向けボソッと呟く

『私よりも重症の貴方に運んでもらっても
罪悪感があり過ぎなのよ)…それで？』

彼は立ったまま私に尋ねる

宗介｢お前に言いたいことは山程ある

だがその前に何故知っている｣

彼が言いたいことは直ぐに判った

数秒して答える

『たまたま病院で見掛けただけ』

宗介｢だったら何故肩のことを知っている｣

『山崎くんが検査していた医師が私の
兄なのよ…其れにあの病院は私の一族が経営する
病院だし』

彼は溜息を突きながら舌打ちを突く

宗介｢なら絶対に凛に言うなよ

口外すれば許さねぇ｣

『りん…凛って本当に彼ばかりね

仲間を信じても何時かは裏切られる

まぁ凛はそんな事しないけど』

宗介｢何が言いたい｣

鋭い目付きで宗介を見つめる

『私の気持ちが貴方に分かるの…散々私に言いぐせつけて！』

宗介｢気持ち…だ？｣

全身怒りの塊で、耐え切れず爆発したように叫ぶ

『本当の仲間になんて言われたか！！』

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〝貴方に景色は魅せない〟

〝負けろ貴方自身が〟

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『…そんなこと言われて本気も出すなと言われて
結果は2位、結局私が手を抜いたって広まって
コーチも後輩も…信頼を失った！！』

宗介｢…！｣

『あいつらは私の実力に泥を塗りたかった
だからあんな事を！！』

彼女は拳でベンチを叩く

宗介｢落ち……つ｣

『泳ぐとき水の風景はずっと暗くて何も見えなくて

檻に閉じ込められて、何処がゴールなのか判らな

い！！』

憤怒に塗れると同時に風が強くなる

『なんでよ…何でよ…全部彼奴らのせい！

私の水泳人生を奪ったのも！

何でよ！！』

彼女は涙を零しながら怒鳴り

宗介の服を強く掴む

『怖いのよ！あんな暗い景色見たくない！！

何で……もう、嫌なのよ！！！！』

彼女の手は震える

すると彼は彼女の目線に合わせ屈(かが)んで

告げる

宗介｢……聞け｣