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story 56.戯言 ページ9








月詠邸






本邸に付くと、最近雇い始めた白髪執事が出迎える。






「お嬢様、おかえりなさいませ。
お食事の準備が整っていますが」




『ええ、ありがとう。赤いワインも用意して』




「承知致しました」






赤いワイン、それは赤い血の事を意味している。

最近雇い始めたこの紳士的な執事は、常に完璧に仕事を熟す。

私が人間では無いこと、血を飲む種族だと言うことを告白しても、

なんの戸惑いもなかった。


「高貴なお方に仕えて喜ばしいです」



と申した。


とんでもない肝座りだ。









『……生身の人間でも、私を恐れないとは世も可笑しくなったものだ』






「……それは私に対して仰っているのでしょうか?」





食器類を準備しながら、執事は尋ねた





『ここには私とお前しかいない』




「私は高貴な方とお伝えしました、貴方が飢えた吸血鬼ならば今頃私の首に牙を向けている事でしょう。ですがお嬢様は決してそんなことはなさいません。何せ老耄の血など美味しくありませんので」





『なかなかと面白いことを言うのね、確かに血は若い者の方が美味。けれど長く生きた者の血の方が力は増す……だから私が飢えた時は、貴方の血を飲み干しているのかもしれないのよ……逃げるなら今のうちだと思うけど』





「御忠告ありがとうございます、ですがA様、食卓の前に飢えたお姿を見せます事は行儀が悪い話です」





『それはそうね……頂こうとしますか』




執事はお辞儀を1歩下がる。



つい最近は父と対面式で食事を採っていたが、今は独り。


別に寂しいとかはない。


ただ……気になることがひとつ






『執事、好きな人と食べる食事は美味しいものなの?』





「左様です、お嬢様。お好きな方と食事を召し上がるということは心が豊かに、そして晴れやかになります。気持ちだけでも食事は美味しく感じるのです。お話も弾みますでしょうし。」





『そう、』






「深夜様をお呼びになられますか?」





『…………──────そうね、いつか』






「不躾ですが、もう少し素直になられては如何でしょうか」





『今の発言に後悔は?』




「御座いません、執事たるものお嬢様をさらに素晴らしい人材にするべくアドバイスも必要かと」




『…………なんだか貴方には敵わないわね。
素直……か。深夜は常に私の味方よ、だけど私が彼の味方であるかどうか怪しくて、自信がないのよ』

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設定タグ:終わりのセラフ , 柊深夜 , 柊暮人   
作品ジャンル:恋愛
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美桜(プロフ) - 良ければ更新していただきたいです! (2022年3月25日 17時) (レス) @page6 id: 73811d8464 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あゆみ | 作成日時:2020年5月31日 19時

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