【d!】俺のおよめさん (ページ1)

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プロローグページ1

あの日の出来事は今でも覚えている

完璧な人間でありなさいと、過酷な稽古の毎日
こなしてもそれは当たり前と見なす周りの大人達

その生活が嫌で嫌で仕方なかった

だから俺は家を抜け出した

ただただ走った
灯りもない道をただひたすらに

外の世界なんて知識程度にしかなく
これからどうしようかと不安で泣いていた

その時助けてくれた人がいた

なにも聞くことなく
｢こっちにおいで｣と言ってくれた

ついていくとそこは花畑だった
とても綺麗だった

｢ここなら泣いても大丈夫｣と優しく声をかけられ
溜め込んでいた思いが溢れた
泣きつきながら思いをぶちまけてもあの人は
黙って、ぽんぽんっと頭を撫でていてくれた

少し落ち着いた時に｢魔法見せてくれる？｣と
言われ、簡易的な魔法を見せた

目をキラキラさせて、なにこれ！すごい！と言った
何度も何度も、魔法を見せれば見せるほど褒めてくれた

凄く嬉しかった

ぴょんぴょんと飛び跳ね、あの人の綺麗な髪が舞い上った
あまり見えなかった顔が月明かりに照らされる

初めて見えたあの人の顔
その時見えた笑顔がとても愛おしく感じた

あぁ、これが"好き"という感情なんだと思った

初めての感覚で動揺していると
遠くの方で気配を感じた

2人で茂みに隠れた
よく見ると、家の護衛の者達だった

恐らく俺の魔力を辿ってここまで来たのだろう
ごめんと言えば心配そうにこちらを見る

ずっと一緒に居たい

巻き込みたくないのに
そう思えば思うほど息が上がり、心臓の鼓動が早くなった
早く行かないと
あの家に戻らないと
戻ないと

一緒に居たい…と言葉が漏れた

何を思ったのか、あの人は手を握ってくれた

自分の手のひらを広げると
そこには指輪があった

｢あのお城でまた会おう！約束！｣

指を指す先は、学校だった

お城とは言い難いが、子供にとっては大きなお城であった

『ｯ…うん！約束！』

あれから10年経った

毎日あの日の事を思い返している
どんなに稽古が辛くても、母親から罵倒されても、自分に打ち負けそうになっても、あの日の約束と指輪が俺を励ましてくれた

今日はいよいよ入学式だ
もちろんあの学校のだ
俺は首席として入学する

あの子の顔は暗くて良く見えなかった
名前も聞きそびれてしまった

そもそも小さな子供の約束だ
生徒の数だって尋常じゃない
ましてやこの学校に居ない可能性だってある
叶わない可能性の方が十分にある

それでも俺は

あの子を迎えに行く