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鬼殺隊の役割は鬼を殺し一般市民を危険にさらさないというものが挙げられる。だが、私は鬼の治癒力を活かし実験を試み人類の発展へと繋げたいと考えている。
とどのつまり私という存在は鬼殺隊の理に反しているわけだ。そうなると私のことを目の敵にする人間は多い。蛇柱なんかがいい例である。
だがその中には変わった人間もいて、逆に私にちょっかいかけてくる人もいる。例を挙げるならば今目の前にいる音柱だ。
ジッとこちらを見てくるが先程の件を許した訳では無い。被検体を殺し、それだけでなく私への罵倒。絹豆腐みたいな私の心は一瞬でひび割れる。
が、無くなったものを嘆いても仕方あるまい。
ガチャガチャと音を立てながら試薬を片付けていれば不意に声をかけられる。他でもなく音柱に、だ。
「やめちまうのか?」
「貴方がやめろと言ったんでしょう」
「へぇ、存外素直じゃねぇか。」
馬鹿にするような笑みを浮かべてからかい口調で話しかけてくる宇髄さん。どちらかといえば苦手、否、これでは語弊が生まれる。私は昔から部屋にひきこもっては実験をし、成功すれば笑顔とも言えないような顔で笑う根の暗い女。元々人と関わりあうのが苦手なのである。
「任務によりゃあの鬼で最後だろうよ。
どうだ?俺と出掛けるか?」
「あはは、馬鹿言ってないで帰りましょ」
「釣れねぇな。生娘でもあるまいしちょっとは遊んだらどうだ」
「ご生憎様、私生きてる人間より死んでる人間の方が好きなので」
「嫁の貰い手がなくなるぞ」
「行く気もありません」
「そりゃ勿体ねえ、俺が貰ってやろうか」
「ふふ、笑えない冗談」
「笑ってんじゃねえか」
試薬品を片付け終わり、その場から立ち上がり衣服に着いた砂を払う。たちまちその場に砂埃が舞い、それだけこの場に長居していたのだと実感する。
木々の隙間から太陽の光が差し込み眩しくて目を細めた。残念だが、太陽が昇れば私の実験もそこで終わり。太陽が昇ってしまえば鬼は出てこないのだ、残念だが。
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作者名:椿 | 作成日時:2020年1月24日 23時