赤と黒の糸 ページ10
いや、思いあたる奴がいるじゃないか。幼少期、深雨に1番近かったあの妖。まさか、あいつと深雨が糸で繋がってるとは思いたくはありませんけど。
「どうするのだ、情報屋。お主と違い、その妹の方はこのままだと人の子ではなくなるぞ」
人の子でなくなる、、、僕は妖でも人でもどちらでも良い。ただこの子が、幸せなら何でもいい。けれど、この子がこの子で無くなるのはいけない。それは、幸せにならないでしょう?
兄「どのようにすれば、妹を助けられますか」
「貴様、それ以上無茶をするつもりなのか?」
これ以上の無茶?当たり前じゃないですか。深雨は僕にとっての最愛の家族ですよ。僕が守らなくてはいけない。
兄「どんな無茶でも、僕の命が持たなくても。妹には幸せに暮らして欲しいものですよ。それが、兄である僕の務めですから」
「、、、貴様の兄妹愛には舌を巻くな。解決策はあの妖を祓う。それか、其奴と今赤い方で結ばれてる相手の気持ちが互いに向くことだろ」
兄「祓うか、赤い糸の相手と両想いになるか」
僕的には祓いたいけれど、あの妖に勝てるかどうかもわからない今、赤い糸の相手と結ばれて欲しい。まぁ、相手次第だろうけど。
「しかし、其奴の糸は黒い糸が濃くなっているだろう。それは、その相手の事を強く思ってる証でもある」
つまり、今の深雨の想い人は妖。なんて、厄介な相手を好きになったんでしょうね。全く、手の掛かる子です。
「だが、本当に良いのか?」
兄「何がでしょう」
「このままだと本当に、お主の寿命はすぐに底をつく。それだと、其奴を守る相手が居なくなるのではないのか?」
兄「確かに、そうですね。けれどこの子が死ぬよりも先に僕は死にたい。深雨を看取ることなんて、二度としたくない」
今だに記憶から離れてくれない、忌まわしきあの日。目の前で"昔の僕"に謝りながら亡くなった"昔の深雨"。最後の最後まで、"僕"の事を思ってくれていた"深雨"を看取ることしか出来なかったあの日。あんな思い、もう二度としてたまるものか。
今世こそ、深雨は幸せにならなくちゃいけないのだから。
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作者名:犬塚みかこ | 作成日時:2023年1月9日 20時