・ ページ9
みなが注目している方に私も目をやった。
そこには、懐かしい麦わら帽子があった。気づけば私の足は動いていた。私は麦わら帽子を持っている彼の方へと引き寄せられるようだった。それはまるで必然のように。
自分でもなぜこんな気持ちになるっているのかは分からない。何故、こんなにも胸が踊るのだろう。
貴「覇王色の覇気…あの麦わら帽子が？」
私はただ唖然としていた。このまま全て上手くいくんじゃないかとすら思っていた。だが、現実はそうではない。それは私がよく知っていた。
ニューゲートの身体はボロボロになっていた。どう見ても様子がおかしい、傷だけならあの痛がり方はしない。
私はそのまま下に降り、ニューゲートの元へ向かった。麦わら帽子は上手くエースを助け出したようだった。ニューゲートが大きな声で叫んだ。それは、"最後の船長命令"だった。
ﾆｭｰｹﾞｰﾄ「A、お前も逃げろ。」
貴「ごめんなさいね。私、逃げるって性にあわないの。」
ﾆｭｰｹﾞｰﾄ「グラララッ、ハナから期待してねぇがな。」
私はすっかり安心していた。
だって、私の傍にはニューゲートがいたから。その安心が彼の胸を貫く結果を招いてしまった。忘れていたのだ、白ひげという海賊がもう古い時代になっていたことを。私だけがずっと今を生き続けていることを。
目の前に映ったのは、エースを貫く大将の姿だった。
「「「エース…!!」」」
叫んでいる白ひげ海賊団のみんなが見えた。
ダメ、ダメよ。私まだ貴方に伝えれてないの。
私は貴方に伝えたい事が沢山あるの、ロジャーは貴方をとても愛してたのよって。貴方にはロジャーの罪など関係ないのよって、伝えないといけないことが沢山あるの。だから、私は誰も失うわけにはいかない。
貴「エースに何晒してんのよマグマ野郎!!"
私は近くにいた海兵どもを蹴散らすように技を放った。
そして、急いでエースの元へ走った。それと同時に、懐かしい気配が近づいてきているのを感じた。だが、その時はそんな事を気にしている余裕がなかった。
エース「オヤジ、みんな、そしてルフィ。
今日までこんなどうしようもねぇ、おれを。
鬼の血を引くこのおれを愛してくれて
ありがとう!!」
麦わらの少年の手からエースが零れて落ちるのが見えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 621人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：楸 | 作成日時：2022年10月5日 20時
