ロジャー海賊団の音楽家 (ページ41)

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episode 14.　紡ぐものページ41

けれど、それもまた"運命"。

私は自分にそう言い聞かせながら、ウタに干渉した。これを使えば、もう二度と自分が甦れない事を悟りながらも、ウタにそっと手を当てて、優しく笑ってみせた。

貴「ウタ、私の夢をどうかお願いね。
時代干渉"Clotho(クロートー)"」

私たちの神は世界の"現在"を司り"紡ぐもの"と呼ばれた女神Clotho(クロートー)。彼女に仕える特別な人間こそがAERA(アエラ)。この世界の行く末を唯一変えることのできる一族。

時代干渉を受けたウタの状態は目に見えてわかるように良くなり、私の身体は徐々に光となり始めた。私の全てが夕日に溶けるようだった。

ウタ「い…や………いやﾞ!!Aさんﾞ!!」

涙を流しながら私の事を抱きしめる彼女をそっと抱きしめ返した。みんなが下を向いて泣いているのが見えた。

海の方には、グーくんが何かを背負ってきていた。

それは私がずっと使っていたヴァイオリンだった。グーくんはそれをシャボンでこちらに飛ばしてくれた。

貴「ウタ、私の夢は世界一の音楽家なる事だったの。最後に少しだけ、私の演奏を聞いてもらえないかしら？」

私がそう言うと、ウタは小さく頷いた。
私が最後に選んだのは"ビンクスの酒"だった。

私の感覚は徐々になくなっていった。最後に目に映ったのは、沈む夕陽とロジャー海賊団のみんなの笑顔と懐かしい日々だった。

演奏が終わる事にはもう目の感覚すら消えていた。

貴「ウタ、みんな。ありがとう……」

ウタ「Aさんﾞ!!」

貴「私の夢を、お願いね。」

私の全ての感覚が消えて、光となった。

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ねぇ、ロジャー。

私は世界一の音楽家になれたかしら。貴方が仲間だと誇れる音楽家に、私もなれたのかしら。そうだったら、もう悔いはないのだけれど。いや、でも貴方なら私がきっとどんな人間でも仲間だって笑ってくれるわよね。

『よく頑張ったな、A。』

私の名前を呼ぶ声がした。とても懐かしい声だった。
その声に私はすぐに後ろを振り向いた。

そこに居たのは、私の愛した海賊団だった。

誰よりも、この日々が続いて欲しいと願っていた。
貴方たちとの航海が私の人生の喜びだった。

『私は、世界一の音楽家になれたかしら。』

『何言ってんだ、お前の演奏は世界一だろ？』

『ふふっ、それもそうね。』

私はいつものように笑った。