ロジャー海賊団の音楽家 (ページ36)

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眠た気な目をしたウタの頭を撫でながら私は独り言のように話した。静かに揺れる船の上、もうすぐ太陽が真上に登る。

それは晴天に相応しい美しい空だった。

貴「私はロジャーとの旅を、あの日々を愛してた。貴女は嫌いかもしれないけど、私は海賊に救われた。」

私は救われた、そして何より彼らを愛してしまった。

愛すべきではなかったかもしれない。こんなに辛くなるなら愛さなければ良かったと何度も思った。けれど、私はそれでも愛さずにいられなかった。

だからあの時、私はロジャーに向かって迷いなく答えた。年月を経て、それが私の夢になりロジャーとの約束になった。

『私は、音楽家になりたい…!!この海にいる誰よりも、私の曲で誰かを笑顔にできるようになりたい!!』

『なら、俺たちと来るだろ？＿＿＿。』

私は願ってしまった。もう一度彼らと冒険ができるなら、この真っ赤に染まった手でもう一度彼らのために曲を作れるなら。

『ロジャー、私をもう一度あの海に…連れて行って!!』

ボロボロと止まらない涙を流しながらそう言った私にロジャーは笑って「もちろんだ。」と答えた。その光景を見て、傷を負った仲間たちもみんなで笑いあった。

その日から私ははロジャー海賊団の音楽家として大海原を駆けた。

貴「"私(AERA)"は人間になれなかった、一族を全て殺し覚醒した私は世界で最も忌み嫌われる存在になるはずだった。」

ウタ「"AERA"……覚醒……」

そうなるはずだった。

その現実をを変えたのも、私自身を変えたのも他でもないロジャー達だ。音楽や故郷の事、私自身の事、仲間の温もりやそれを失う寂しさも、その全てを教えてくれたのは彼らだ。私は彼らのおかげで"人間"でいられた。

私は少し揺れる視界と懐かしさに浸っていた。

貴「嫌ってくれ、憎んでくれと願った。そんな私の負の感情を消し去ってくれたのは船長だった。彼が私に生きていく方角を示してくれた。だから、仲間なら話し合うのは大事なことよ。」

生きていれば言葉をかわせる。

その人の目見て、心を覗くことが出来る。けれど死んでしまってからでは遅い。その人の何を知る事も出来ずに死ぬ恐ろしさは私が誰より知っている。

もう一度願いが叶うなら、ロジャー。貴方に会いたい。

貴「貴方は一体、何者なの？」

ウタ「私………私は、」

ウタは下を向き立ち上がった。