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エレジアに向けて出発して数日。
一向に着く気配はない。
「グーくん、退屈ねぇ〜。」
ただ見えるのは青い海、空、海、空、海、空。
ずっと見ていたら頭がおかしくなりそうだ。
食料はシャンクスたちの船からパクった分があった。
だが、あまりの退屈さに彼女は苛立っていた。
「ヴァイオリンの調子も悪いし、ついてないわ。」
彼女の様子を見ていたグーくんはいつもよりも太陽に照らされたAの黒い髪と血よりも真っ赤な目がキレイで見とれ、スピードを落としていた。その視線に気づいた彼女はフッとグーくんの方を見た。
「グーくん今日はやけに遅いけど…気のせいかしら？」
覇気を少し漏らしながらそう言う彼女の目は今にも血の雨をふらせそうなほど真っ赤だった。その様子にビビったグーくんは、海王類だと言うのに冷や汗を垂らしていた。
それが面白く笑っていた彼女の暖かな笑みにグーくんはホッとした表情をしていた。
「あら、やっと見えてきたわね。エレジアに一番近い島。」
自然豊かなその島に船とグーくんを置いてAは街に出た。
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初めに向かったのは島にある楽器屋だった。
店内には古い楽器たちが並んでいた。
店内にある会計場所に目を向ければ馴染みの顔がいた。
貴「久しぶりね、ムダーラ。」
ﾑﾀﾞｰﾗ「…あ？」
椅子に腰かけ、壁にもたれかかり眠りかけていた彼に私は声をかけた。古い馴染みのムダーラ。私と同じ音楽家…と言うよりも楽器の修理・調整を行う"楽器リペアマン"だ。
寝ぼけて眼鏡をかけ直した彼は椅子から崩れ落ちた。
ﾑﾀﾞｰﾗ「ｺﾞﾎｯｺﾞﾎｯ…テメェなんで生きてんだ!!」
貴「私何度も言ったわよね、私がアエラだって。」
ﾑﾀﾞｰﾗ「あー……そっか、そうだったなー。」
貴「"アエラ"すら忘れたのねこのボケ老人。」
腰をゴキゴキならしてるこのジジイは私の古い友人。
昔はよく楽器の修理をしてもらってたけど、物忘れが酷くて私の事をよく忘れるし、船の乗り方を忘れる。ついにはどこの島に行こうとしていたかすら忘れるボケボケの野郎だ。
だが、その代償か…腕は本物。だがら彼の元を訪れる演奏家は多い。
ﾑﾀﾞｰﾗ「またヴァイオリンぶっ壊したか？」
貴「潮風に当てすぎて調子が悪いのよ。」
ﾑﾀﾞｰﾗ「ほぉ……この状態なら1週間後取りに来い。」
彼はそう言うと店の奥の方に消えた。
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作者名：楸 | 作成日時：2022年10月5日 20時
