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私がそう言うと彼はまだ何が何だか分からないと言った顔をしていた。けれど、徐々に追いついた彼は口をあんぐりとして驚いていた。
やはり彼は思ったよりも可愛らしい人だ。
ﾗｲﾑ「おとぎ話かなんかだと思ってた…」
貴「ふふっ、みんなそう言うわ。でも現に私はここに居る。それだけが変えようのない真実よ、ライムジュース。」
ﾗｲﾑ「じゃあ、アンタは繰り返してるのか？」
彼は純粋そうな顔でそう言った。
けれど、それを他のアエラに言えばきっと怒られたでしょうね。すごくデリカシーが無いことだもの。今日の下着の色や形を聞く事くらいデリカシーがないわよ。
私は少しため息をついてから答えた。
貴「そうよ、私たちは繰り返してる。少し宗教的に言えば輪廻転生に近い何かだと思ってくれて構わない。輪廻転生と決定的に違う点は私たちには"死"がある事よ。」
ﾗｲﾑ「はぁ？アエラって死んでも生き返るんだろ？」
言い方がまどろっこからか、ライムジュースは徐々にイラついてきたらしい。明らかに血管を浮き上がらせてきている。
だが、これはそう簡単に言葉にできない。
自分の頭の中のことを完璧に言葉にする事なんて余程の作家にも詩人にも出来はしない。それを"できる限り"の状態でしか言葉にすることが出来ず、思っている事と少し違う表現をせざるを得ない。
木々の間に木漏れ日が差し込むように、雨粒が落ちるように言の葉にも隙間がある。そして、そこから"伝えたかった本当の気持ち"がこぼれていく。
貴「私たちは"使命"の為に何度でも生き返れる。けど"使命"が無くなれば私たちはお役御免。もう生きる意味もない私たちは"終わり"に帰る。」
ﾗｲﾑ「ソレ答えになってねぇだろ。」
貴「…あら、バレた？」
ﾗｲﾑ「やっぱバカにしてんだろお前!!」
彼は私に殴りかかる為と起き上がろうとした、だが私は起き上がろうとした彼をポンっと押し返しまた地面へと着かせた。
そして私は彼の頭へ手を置いて笑顔で言った。
貴「シャンクスの記憶で見た、"小さな音楽家"はとても素晴らしい才能があったわ。誰より歌を愛して、愛されてる。随分長く音楽家をしてきた私から見ても羨ましいほどに。」
そう、彼女の歌は素晴らしかった。素晴らしすぎたのだろう。ただ、それを披露する場所が悪かった。
けれど、最後にあの歌声が聞けたなら私はどんな気持ちで死を迎えられるのだろう。音楽家の私はそれを羨ましく思った。
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作者名：楸 | 作成日時：2022年10月5日 20時
