×恐怖→○恋愛対象となりました 【時透無一郎】

104 蟲柱の飴と鞭 ページ9

胡蝶「覚えてない君に言っても仕方ない事かもしれません。でも貴方がAさんに言ったことは、とても理不尽なものです。記憶の有無に関わらず反省すべきことですよ」

時透「っ……それについては、僕が間違ってたと思ってるよ……Aにも、思い出したら謝るつもりでいたし」

胡蝶「あらでは＿この罰を受け入れるということですね！良かったです」

時透「……は？」

困惑の声が時透の口から漏れる。そして

胡蝶「では、頑張って下さいね！
因みに思い出すまでは＿お二人が恋仲になることは許しませんから」

時透「………は？」

不満と怒りが混ざった声が今度は出た。

胡蝶「勿論思い出す前に、Aさんが本気で時透さんを好きになっても認めませんので、そのつもりで」

冨岡「！」

時透「…勝手すぎない？そっちの方がよっぽど理不尽でしょ」

胡蝶は笑みを消して言う。

胡蝶「前にも言いましたが、あの子は私にとって妹のような子です。傷つける行いをした貴方にAさんを任せられません」

時透「ｯ…」

胡蝶「友人関係なら、自然に思い出すまで待つつもりでしたが、恋人関係であれば話は別です。
あの子にした事を忘れたまま、恋人として貴方を隣にいさせるのは許しません」

時透「……ｯｯ…」

何も言い返せなくなり、膝上の両手に力が籠る。

胡蝶「……私も、意地悪でこんな事を言ってるわけじゃありません。むしろ…喜んでます」

時透「…喜ぶ？」

胡蝶「君が、人として大切な感情を持ったことは、担当医としてとても喜ばしいです…相手がAさんなのが複雑ですが」

眉を下げながら苦笑する。

胡蝶「Aさんは相手をよく見て知ろうとする子です。時透さんの行いに悪意が一切ないのも理解してます。実際今まで、君のことを責めたりしないでしょう？」

時透「…うん」

胡蝶「あの事もAさんは悪気があったわけじゃないと済ませてます。君の謝罪も望まないでしょう…でもそれでは駄目です。それはあの子の優しさに甘えてるのと同じです」

時透「！」

胡蝶「時透さん…Aさんと恋仲になりたいなら、ちゃんと傷つけたことを謝り、けじめをつけて下さい」

時透「……」


その時、


ﾄﾞﾀﾄﾞﾀﾄﾞﾀ!

誰かが部屋に近づく。そして…


『しのぶさん、すみません!!入ってもよろしいですか！？』

時透「！！」

冨岡「…」

胡蝶「ええ。構いませんよ＿Aさん」

ｽﾊﾟﾝｯ

そこには…

顔を青ざめさせ、焦りの表情を浮かべるAがいた。

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