偽り夫婦【Kenshiro.K】 (ページ7)

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『何で？夫婦やろ？』

「でも、父が…」

『ええから。お義父さんはここにおらんし、もし怒られるんやったら勝手にお茶入れた俺やから。今日くらい甘えて。』

「はい…」

涙が出そうになった。

甘えてなんて、この人生言われたこと無かった。

親からは1日でも早い自立を望まれてて、物心が付いた時には身の回りの事を1人でやっていた。
親もずっといる訳じゃないから、泣き言を言う暇なんてなくて。

誰かに何かをやって貰っている間、何だかむず痒くて。
チラチラと川西さんの方を向いたり前を向き直したり。

『どうぞ。素人やから美味しいか分からんけど。』

「ありがとうございます…」

『そんな改まらんでもええのに。もしかして、男の人と関わるの初めてとか？』

「いえ、そういう訳では。」

『ねえ、俺でええの？ホンマにこの事に納得してんの？』

「はい。」

『ホンマは好きな人とかおるんちゃうの？』

好きな人…作った事はあるけど、大体かわお金に目が眩んだ人達で。
いい思い出があまりない。

「好きな人は作らないって決めたので。」