偽り夫婦【Kenshiro.K】 (ページ3)

今日:3 hit、昨日:11 hit、合計:23,103 hit

・3 ページ3

新婚？初めての夜？

そんなもの、私たちにはありえない。

「おかえりなさい。」

『うん。』

見かけだけの夫婦。親同士がこれからも豊かになれる為の関係。

一応、2人分のご飯は毎日作っている。

ほぼ毎日あの人は食べて帰ってくるけど、急にここで食べることも考えて。

『いつもいつも作ってくれてるけどさ、ええで。
俺、ほぼ毎日食って帰るから。』

そんな事を言われ、呆れた目を向けられることもあった。

でも別にいい。好き同士の結婚じゃないし。

そんな事を考えて、何度目かの1人夕飯を食べようとしたら、部屋のドアが開く音が。

「おかえりなさい。すみません気づかなくて…」

『ご飯…ある？』

「え？あ…あります。すぐ用意しますね。」

『ありがとう。』

初めてした夫婦らしい会話。夫婦らしいか分からないけど。

急にどうしたんだろ…色々都合が付かなかったのかな。

「どうぞ。」

私も向かいに座ってご飯を食べる。

『いただきます。』

「どうぞ。」

お口に合うかな…

『うまっ！何これ。教えて貰ったん？』

「学生の時に少しだけ。うちのシェフに。」

『そっか。』

--------

「「ごちそうさまでした。」」

そう言うと彼は食器を下げようとしていた。

「あ！そのままで大丈夫ですよ。」

『そう？じゃあ、お願いするわ。』

誰かとご飯食べるのなんて何年ぶりだろうか。

大学で友達とお弁当を食べた以来かも。

他人と一緒にご飯が食べられた事と、美味しいと言って貰ったのが嬉しくてつい笑みがこぼれた。