偽り夫婦【Kenshiro.K】 (ページ12)

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『この日さ、俺急に仕事になってもうたから。
《aquamarine》ってお店で待っててくれる？
あれやったら飲み物とか先頼んでて。』

「わかりました。」

デートの日が、急遽劇場出番になってもうた。

彼女が1人で外出てるのは見たことなくて、名の知れた資産家の娘やし、顔さしてるんちゃうかとか色々心配にはなったけど、終わったあとすぐにデートに行けるように来てもらう事にした。

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『ありがとうございました～。』

公演が終わり、さっさと支度して劇場の外に出る。

『すみません。aquamarineまで。』

俺がこんな急ぐのはさっきの心配もあるけど、
単にあの子が他の男に1秒でも見られてるのが嫌で。

何かあったらどうしよう。ナンパとかされてないやろうか。Aちゃんは興味本意でついて行きそうやからな…
そんな事を考えるとタクシーも余計に遅く感じる。

『お釣り大丈夫です。ありがとうございました。』

そう言い半ば強引に降りた後、急いで店に入る。

「あ、賢志郎さん。」

『ごめん、遅くなった……』

店の個室に入り一目見た彼女は、普段のパンツスタイルとは違った可愛いらしいワンピース。
少しゆるめに巻かれた髪の毛。

別人と見間違うほど可愛かった。