偽り夫婦【Kenshiro.K】 (ページ1)

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『お前はこの人と結婚しなさい。』

「はい。」

私の人生は、親の敷いたレールしか通れない。

自分の意思とか、自由とかはあってないようなもの。

おまけに令和のこの時代に嘘みたいな策略結婚。

自慢じゃないけど、うちは結構名の知れた資産家で、たくさんの企業に融資や出資をしている。

もちろん、私もその恩恵は受けていて、名の知れた大学とか、有名な企業で働かせて頂いていた。

ちなみにこの結婚をするまでは全く恋をしなかった訳では無い。好きな人もできて交際もしたけど、続かなかった。いや、続けられなかった。

付き合って来た人は多くが父のお金目当てだった人。
良いように利用されて、捨てられて。

父からも何度も『自分で決めるからだ』と怒られた。

目の前に座る男の人は、まるでロボットのように目に光がなく、一点を見つめている。

「川西賢志郎さん…」

父が言うには芸人さんらしい。あちらのお父さんが言うには
「名の知れたお嬢さんの方が安心する」のだそう。

芸人って、チャラチャラしているイメージあるし、
私の中では良く思わないけど、父は良いんだろうか。

「あの…私で良いんですか？」

『会社の為だから。よろしくな。』

こうして、偽りの生活が始まった。