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「どちら様でしょうか…」
目の前には女の人。あ、あの時賢志郎さんと歩いてた人だ。
《……どうしても話したいことがあって。ここじゃ何だからそこのお店で話しましょうよ。
自己紹介はそれからね。Aさん。》
何で私の名前を…
--------
「私が出しますよ。」
《良いから。私が急に話をもちかけたんだし。》
「そうですか。すみません…」
賢志郎さんの彼女さんと奥の席に座り向かい合う。
しばらくの沈黙の後、
《あんた、賢ちゃんと付き合ってるの？》
「え…？」
《本人から聞いたから。好きな人出来たからって振られてね。色々問いただしたら、あなただったの。》
「すみません…賢志郎さんとあなたがお付き合いしてたのは知っていました。
策略結婚だし公にはしていないので、別に良いかと思ってて。」
《でも、別れるんでしょ？これも昨日賢ちゃんから聞いてね。謝るのは私の方。本当にごめんなさい。》
「いえ、そんな…先にお付き合いしてたのはそちらです。」
《でも、別れるのってあの事が原因よね…？》
「それが原因と言うより、変にのめり込み過ぎたんです。
あの人、私が世間知らずだから色んな所に連れて行って下さって。
私が、勝手に好きになったんです。」
《それ、出しちゃうの？》
彼女が指さすのはカバンから少しはみ出した封筒。
咄嗟に隠す。
「いえ、これは…」
《もう少し、話し合ってみたら？私なんかが言うのはあれだけど…賢ちゃんに好かれてるのはあなたよ。》
何言ってるんだろ…
近くで見ても賢志郎さんの彼女は可愛らしくて、でもどこか色っぽさもあって。
化粧だって髪型だって私の何倍も気を使ってそうな感じ。
賢志郎さんが嬉しそうに連絡するのはあなたなのに。
そう伝えたかったけど、目の前にいる彼女はどこかもう吹っ切れていて。
《賢ちゃんを幸せに出来るのはあなたしか居ない。
元カノが何言ってんのって思うかもしれないけど、私からもお願いします。
もう一度、ゆっくり話し合ってみてください。
芸人さん仲間も、あなたが出てから調子悪いんですって。》
「でも…」
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作者名：さっちゃん | 作成日時：2022年6月27日 21時
