3体目:十八番 ページ4
「 “ オレ ” の十八番を披露してやるよ」
と、言うと三人(二人と一匹)は喜んだ。カバンを開き、人形を二体取り出す。黒髪と金髪の人形。
優しくて、勇敢で、似合わない変なメイクをしたあの人のお話。
かちゃ、カタカタと、人形特有の音が鳴る。俯いて指に糸を繋ぐ。全部で10本、指の数と同じ。
「船長!遅いですよ!」「あ、人形芸見たことあるんだっけ?」と、頭上で会話する男ども。
船長ってことはコイツらは海賊か?マヌケそうな海賊もいるもんだな。
その騒がしさを一蹴するように「うるせー」と、一言。「船長」と呼ばれた男の声。
「…ッ!」
声を聞いた反射で顔を上げた。そこには目元にクマがある黒髪の少年。
知らない声、否、よく知った声だった。声変わりしているのか。だが、面影はある。
思わぬ再会で、急に喉が渇き心臓がどくどくと鼓動を速めた。
同時に殺人衝動が蘇る。血が疼く。
──ローを殺せ。
だめだ。
──「ローを、助けてやって、くれ」
あぁ、ほら。
アンタの言葉は呪いだよ。わたしの全てを蝕む。
「お兄さん達は海賊、なのか?」
「まだ。その予定だけど」
「で、この人が船長」
「キャプテンかっこいいんだよ」
「…そう、準備出来たよ」
立ち上がり、指から垂れた糸がピンと張り、二人を立たせる。少し、少しくらい、傷付けても良いよね?だって彼は私の殺したい人で助けなきゃいけない人。
「今からするのは海兵の青年と海賊の少年の話」
口角を上げて、明るいトーンの声で物語を紡ぐ。帽子を深く被っているから前はよく見えない。きっと、良い景色だろう。
だって。
「ッ!」と、息を飲み込んむ君の声が聞けたから。
あぁ、やっぱり君なんだね。
トラファルガー・ロー。
不治の病の男の子。可哀想な子。
恩人のあと人が愛した子。
わたしからあの人を奪った子。
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作者名:ポン吉 | 作成日時:2019年10月5日 21時