14体目:裏山にて ページ15
「行くところがあるから」
そう言って宿屋を後にしたAは、ローの知る人そのものだった。光の無い瞳、冷たい声、そして忘れることのできないゾッとする殺気。
ローは深い溜息を吐いて、あとは頼むと言い残し、Aと同様に宿屋を出た。が、Aがどこに行ったのかわからない。
恐らく、海賊達を殺しに行ったのだろうが、この島に来たばかりのローには何もわからなかった。ローは歩みを進めた。そして思考をフル回転させた。
「…山の、船」
この島に上陸する前、山側に船が止まっていたのを思い出した。あの船が海賊船だとすると…。ローは自分の能力を使って、山側へ急いだ。
山に入り、少し歩くと、開けた場所があり、そこに一隻の船が停泊していた。船に近づくと、懇願する男の声や断末魔が聞こえてきた。
しばらくすると、シンと静まり返り、風が草木揺らす音が聞こえる。血塗れのAが静かに船から降りた。
「ごめん、ロシー。人、殺しちゃった」
「…ッ!」
Aの天を見上げて呟いたその言葉に驚いて、バキッと小枝を踏んだ。その音でAはこちらを見た。
一瞬でAとの距離を詰めた。そして、ポケットに仕込んで置いたメスをそいつの喉元に突き付けた。
「よくわかりましたね、傀儡嫌いの船長さん」
人を小馬鹿にしたような軽い口ぶりで言った。そして、口角が上がっただけの下手な笑顔でおれを見ていた。目は決して笑っていなかった。
ロー「なぜ避けない?」
「はて?わたしは、ただの傀儡師ですので、そのような身技は…」
戯けるように両手を上げて、「抵抗しませんよ?」とへらりと笑った。Aの態度にローは怒りを募らせつつも冷静を装った。
ロー「ただの傀儡師が血塗れにはならねぇ」
「これはわたしの血ですので」
ロー「その割にはしっかり立てんだな」
「えぇ、痛みには鈍感なんです」
ロー「ふざけるのも大概にしろよ!A!」
「…テメェに言われたくねェよ、ロー」
貼り付けられた笑顔は一変して、殺意の篭った面持ちのA。「やっと本性だしたか」と言った。そして、グッとメスを握る右手を強く握り締めた。
やっぱりこいつは敵だ。
「伝言を預かっている」
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作者名:ポン吉 | 作成日時:2019年10月5日 21時