尽くされ、愛され【Selly】 (ページ14)

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A視点

「Aごめんね。」

『え？』

いつも通り任務から帰ってお嬢に勉強を教えていた日、お嬢からこんな事を言われた。

『いきなり……何かありました？』

「私のせいでいつもA苦労してるから。」

『私はお嬢のおかげで毎日楽しいですよ』

私がそういうとお嬢は分かりやすく目を逸らした。

「……本で見たんだ。Aは優しい人だから“普通”に生きてたならもっと楽しい事があったはずだよ。」

それに美人さんだし、と付け足したお嬢はどこか悲しい眼をしていた。

恐らく先日体調が悪いまま任務に行って、体に見せられないほど醜い傷ができた事が原因だろう。

お嬢はいつもこんな私を心配して、暖かい手で握りしめてくれる。何人も、何十人も、何百人も殺めている私の手を。

本当に優しいのは誰だろうか。

『優しいと思っているのはお嬢だけですよ。』

「そんなわけないよ。今だって隣に居てくれるじゃない。」

「私の自慢のAだよ。」

産まれた時から愛された事が無い私が
初めて愛情を注いだ。

周りの危険から身を粉にして守った。

いつかお嬢が消えてしまうのではと不安で眠れない夜もあった。

「私の自慢Aだよ。」

その一言で私は救われたんだ。

コンコン、といきなりノックする音が聞こえて、びっくりして目を開けるとすぐに知らない景色が視界に飛び込んだ。

夢だった。

『はぁ……』

さっきからノックされてるし早く起きないと、

ってあれ何かが体に巻き付いて…？

『…………Sellyオッパ』

絶対に殺されないとは分かっているのに、人間との距離に慣れていなくて体が震えた。

殺らないと…………？違う……違う、仲間だから

『違う…。』

「おきてますか………？えっとAさんですか？」

恐らくさっきからノックをしてた人が、音を立てないように部屋に入って来た。

少しイントネーションに癖がある赤い髪に黄色い目。

まっずい人間だ。