尽くされ、愛され【Selly】 (ページ1)

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A視点

辺りは銃声。

とっくの昔から慣れているはずなのに今日だけは何故か身体に緊張が走った。

最強と謳われる犯罪組織“CR”がLuciaに攻め込んで来たからだ。もう此処に来るまでに、何度手を染めただろうか。私の服は真っ赤に染まっていた。

《聞こえてるか？今の状況は？》

〈 …… 〉

嗚呼、殺られたのか。

私以外の構成員はほとんど全員殺られたのか、無線では誰1人として反応を示さない。柄にもなく冷や汗が出た。

そんな時手に暖かい温もりを感じた。

「ねえA……どうなってるの…？」

そうだ。まずはお嬢をこの場から逃さないと。

　

『どっか遠い所に逃げましょっか。』

「Aもついてくるんだよね…？」

置いてかないでと言わんばかりに私の腕にしがみついて来た。私だってまだお嬢と一緒にいたい。

『…私はまだ此処に残らないと行けません。』

なんて、なんて可哀想な人なんだ。残虐なマフィアのボスの娘に産まれたばかりに。“普通”に産まれてれば周りの子と変わらない娘だったのに。

「やだ…！！！A置いてかないでっ！！A！！！」

そんな顔しないで。

愛らしい大きな瞳から涙が、一滴二滴と床に零れ落ちた。私はこの涙を拭ってやることが出来ないのだから。

『お嬢、お元気で。』

　

まだ辛うじて生きていた構成員にお嬢を引き渡した。行き先は遥か遠くの国境を超えた韓国の孤児院。もしものために連絡をしたのだ。

『はぁ〜あ。私もお嬢と一緒に逃げたかったなぁ〜。』

そんな事考えたってお嬢の幸せは私の幸せ、だから。

それだけを考えて、涙の跡がついたコンクリートの床に縋り付くように腰を下ろした。

その途端、自分がいた部屋の外から叫び声と共に銃声が響いた。

来ちゃったのか。

　

『まあ来世に期待、か。』

私は右手に持った銃をそっと頭に向けた。

その瞬間バァン！と勢いよくドアが開いた。