チューリップ Ⅱ【七五三掛】 (ページ8)

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「ヒナってさ、結構Mだよね」

『…はい？』

駅まで迎えに行くわ、

なんて連絡を貰って大人しく待っていたら手を引かれて路地に連れ込まれる始末。

海斗さんは相変わらずの読めない表情をしている。

「今だってちょっと喜んでるっしょ」

『…今日機嫌悪いですね、なんか』

「ヒナが楽しそーだからムカついた」

子供かっての。

「いい事あったんだ？えーっとなんだっけ、あ、龍也さん？」

『関係ないですよね』

「図星かー」

手を恋人繋ぎにされ、静かに2人で海斗さんの家まで歩く。

もう春になるとはいえ夜の風は冷たい。

・

「さっきの、会うだけですよーってやつ」

・

「…もう俺の事嫌いになったの？」

急に弱々しくなるのやめて欲しい。

信号はまだ赤のまま。

『別に、そんなんじゃ』

「じゃあ彼氏出来た、とか」

何も言わなかった。

「…マジ？」

『彼氏は出来てません』

無意識のうちに含みを持たせるような言い方になっちゃった。

「彼氏が出来たら俺とはもう会えなくなっちゃうね」

なんでもないように海斗さんはそう呟いた。

『…そうなんですか、』

「だって、彼氏さん悲しむよ、ヒナが俺にあんなことされてるなんて知ったら」

『……』

少し、ほんの少しでも悲しいと思ってしまったのが悔しい。

・

「ごめん、変な話したね」

信号が変わって歩き出す時、そっと握り直される。

海斗さんのピアスが小さく揺れた。

・

もう春の風だった。