チューリップ【七五三掛】 (ページ18)

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「…あれ、なんかしてる？」

さっきまで寝てた宮近さんが目を覚まして歩いてくる。

『すみません、キッチン借りてます』

「…ほんとに作ってくれてんの？」

お味噌汁。

なんとなく悪い気がしたし、私の気が収まらないから。

『野菜全然無かったんで、ちゃんとしたのじゃないですけど』

「いーよ全然、ありがと」

私の腰を抱いて、首に頭を乗っけてくる。

傍から見ればカップルみたい。

宮近さんの服着て、同じシャンプーで、同じ匂いさせて。

一晩行為した後にこんなに優しくしてくれるのも、あぁ大人だなって感じる。

これが中村とかだったら速追い出されてそう。

なんで中村と比べてるんだろ。

『はい、どうぞ』

「美味そ。まじて嬉しいわ」

『…良かったです』

自炊しといて良かったのかもしれない。

「あれ、ヒナちゃん何してんの」

『流石に帰ります。迷惑かけてすみませんでした』

「めっちゃ急だね。いいじゃん、もうちょっと居れば」

『そういう訳にも…』

「おれがヒナちゃんと一緒に居たいんだけど」

ほらまた、まっすぐな黒い瞳で射抜かれる。

それでも、ほんとの名前は呼んでくれない。

『…宮近さんさんは、』

「やっぱ海斗にして」

『お店でそう呼んじゃったらどうするんですか』

「俺もうヒナちゃんの店行かないから」

『、あ』

そりゃそうか。

キャストと関係持ってるなんて知られたらどうなるか、馬鹿でもわかる。

『ほんとにごめんなさ、』

「なんで謝んの？給料もそんな言い訳じゃないし、全然シフト入れねーし、そろそろ辞めようと思ってただけだから」

『…そうですか』

たった一晩で、私たちは大きく変わってしまった。