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私の目はおかしくなってしまったのか、
それとも今日の夕日が真っ赤なせいなのか。
家まであと20メートル。
大きなスーツケースとともに見覚えがありすぎる人が私の家の前に立っている。
何度瞬きしても消えることなく、ただ近づいて、確信に変わっていく。
こんなの聞いてない。私が聞いたのは帰国だけで、ここにいるなんて聞いてない。
母に呼ばれたのはたまたまなのか、わざとなのか。
どちらにしろ、彼が、
あのプロサッカー選手の千切豹馬が、
私の家の前にいる事実は変わらない。
自分の家は隣なのだから、先に荷物置けばいいものを、わざわざ自分の隣に置いているのは、それより先に私に会いたかったとでも言いたいのか。
彼との距離を2m残して立ち止まった私に、久しぶりと呟いた彼の声は、最後に聞いた時よりも少し低くなった気がする。背も伸びたし、ガタイも良くなった。
変わらないところと言えば、中性的な美形の顔くらい。
そういえば会うのはいつぶりだろう。
高校は共に卒業して、その後からお互い違う道を歩いてきた。
成人式に豹馬は参加してないし、イングランドに行く時のお見送りに私は行けなかった。
携帯も変えてLINEも初期化したから、連絡も取っていなかったし。
そう考えたら、高校が最後、?
それでも懐かしい気がしないのは、ニュースが彼の情報を伝えてくれていたからだろう。時には雑誌や週刊誌からも。
「久しぶり」
自分の家の前に、会いたかった人が立っているという驚きが全身を占めていた私が何とか絞り出した声は震えていて気持ち悪かった。
聞きたいことも言いたいことも沢山あったはずなのに、1つも声になって出ていこうとしない。
ただ口が開いたり閉じたりするのを繰り返している。
それくらい私はただただ驚いている。
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作者名:iyu | 作成日時:2024年1月11日 6時