【WT】とても寂しいお別れでした (ページ2)

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『短編集が気に入れば長編にも挑戦してみます！』

お、じゃあ決まり。大先生はそう呟いて短編集と貸出カードに判子を押してその本を手渡してくれた。…本借りるの初めてだから自分が押してもらうの新鮮だな…。

中学の頃、今と同じ図書委員だったので判子を押す作業はよくやっていたのだ、懐かしい。

「って、もうこんな時間か。Aちゃん、そろそろ教室帰り、予鈴なるで」

『わ、本当だ……、じゃあまた今度！』

「ん。またな〜」

大先生に手を振りながら図書室のドアを開けようとすれば、ぼふ、と何かにぶつかった。

「わっ、」

『ぎょっ、』

ぶつかったものはどうやら人だったらしく、慌てて少し離れて顔を上げれば、図書室ドア並みに背の高い男子生徒がいた。…ネクタイの色的に同級生だろう。

『ごめんね！よそ見しちゃってた』

「大丈夫。こっちこそごめんな、怪我してない？」

私の方からぶつかったのにも関わらず、彼は申し訳なさそうに眉を下げてこちらの様子を伺っている。…優しいなぁ。

『うん、大丈夫。ありがとう』

その様子に慌ててお礼をいれば、彼は安心したように口角を緩ませ、にっこりと愛嬌のある笑顔を浮かべる。制服をきちんと着こなしているし、眼鏡をかけているせいなのか随分と好青年に見えた。

…この人、めちゃ良い人だ。

本当にごめんね、ありがとう！と声をかけ、私は廊下にかかった時計を見ながら早歩きをして教室へと戻っていった。

ってあれ。

『そういえば、あの人どこかで会ったような…？』

＊＊＊＊

「てかAちゃんギョッって…魚か！」

「あの子、大先生の女？」

「ちゃうちゃう、普通に委員会の子」

「え？そうなん！？」

「あれよ、ショッピくんと同じクラスの」

「ああ！ショッピとよく一緒におる！」

「そうそう、探偵事務所でバイトしてる子」

「………ふーん。探偵事務所、なぁ」

ニヤリ、彼は何処か胡散臭さのある笑みを浮かべた。

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