___ ページ6
『……音羽さんがどんな理由で官僚になったかは私には分かりません。きっと私には想像出来ないような事があったんだと思います。…だけど、赤ちゃんを一生懸命蘇生する音羽さんの姿は、医師そのものでした。
…私はそんな音羽さんが格好良いなって、思います。』
Aにとってその言葉が今最大限にできる音羽への気持ちの伝え方だった。世界がどれだけ彼を軽蔑しようと、汚い奴だと罵ろうと、私だけでも彼の味方でいたい。
「………政治家の命令なら何が何でも通そうとする男ですよ？」
『………知ってます。』
「貴方を警視総監の娘だと分かってて付き合うような男ですよ？」
『…それも、知ってます。』
「………貴女には叶わないな。」
音羽さんが小さく何かを呟いた。ほんの短い言葉で聞き取れず聞き返そうと少しだけ体を前屈みにした時。
音羽さんの腕が視界の隅で動いたと認識した時には既に強い力で自分の体が引っ張られていた。
それが音羽さんの腕だと気付いた瞬間にはもう既に、気が付けばAの体は音羽の腕の中に閉じ込められていた。
『……音羽さ、ん？』
あの時と違うのは明確に今音羽の意思によって抱き寄せられているということだった。それが余計に、Aの頭の中を混乱させる。動揺の余り音羽の腕の中から抜け出そうとすれば余計彼の腕に力が入り、更にぎゅっと抱き締められる。
「……じっとして下さい。暴れないで。」
『だってそんな事言われたって…』
「……………お願いだから、今はこうさせてくれ。」
音羽の弱々しい声に思わず声が怯む。
私の肩の溝に顔を埋める彼からは、鼻を啜るような音が聞こえた。
下から私を抱き寄せる彼の背中に恐る恐る腕を回す。
彼の震えを止めてあげたくて、ゆっくり優しく、子供をあやす様に背中を摩る。
『………音羽さん、大丈夫です。』
「…………ああ。」
『…私がついてます。』
「………昔俺の母は、お金も無くて録な治療も受けられず何も出来ないまま亡くなった。」
『………。』
「お見合いで会った"義母"は再婚相手だ。義母の家系は金持ちで今は何不自由無く暮らせているが、俺は母のような人を出さない為に医師免許を持ちながら官僚になった。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1046人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「TOKYOMER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
HATHUTA(プロフ) - コメント失礼します！シリーズの中でこのシリーズが1番好きです！Sっ気あってツンデレ強な音羽先生がたまらねぇです（笑）まさに見たかった音羽先生！って感じです、ありがとうございます。 (5月5日 6時) (
レス) @page19 id: f9b555f004 (このIDを非表示/違反報告)
桜奈(プロフ) - あっ！そうでしたかすいませんまたその時にリクエストします！ (2021年9月10日 17時) (レス) id: d4cad16a17 (このIDを非表示/違反報告)
mado(プロフ) - 桜奈さん» コメントありがとうございます。そのように言っていただけて大変嬉しいです。申し訳ないのですが必読にも書いてありますように今の所リクエストを受け付けておりません。いずれ改めて募集するかと思うので、是非その時によろしくお願い致します‥‥！ (2021年9月10日 16時) (レス) id: c324cc81b5 (このIDを非表示/違反報告)
桜奈(プロフ) - もうmadoさんの作品にどハマりまくりてます！音羽先生のデレデレがこう心に「ぐぉっ！」ってくるんです！語彙力ないですが楽しく見ています！リクエストなのですが喜多見先生と街中で歩いているところを見た音羽先生の嫉妬劇みたいです！ (2021年9月10日 8時) (レス) id: d4cad16a17 (このIDを非表示/違反報告)
mado(プロフ) - aさん» コメントありがとうございます！語彙力失う程に楽しんでいただけて何よりです^^1番と言われて大変恐縮ですが、期待を裏切らないようにお話頑張りますので更新したらまた是非読んでやってくださいね。 (2021年9月7日 19時) (レス) id: c324cc81b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mado | 作成日時：2021年8月18日 21時
