不器用な彼と奥手な私

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『………っ、すみませんがこの方達も一緒に乗せて頂けないでしょうか？』

「…………………ちっ。」


初老の男性が小さく私に向けて舌打ちをした。

さり気なく音羽さんの方へ目を向ける。
初老の男性が「もういい」と音羽さんに話すと、音羽さんはスペースを開ける為に左へ車椅子を寄せた。





『…これで、大丈夫だと思います。』

「Aさん、すいません。ありがとうございました。」



涼香さん達がエレベーターに乗ったのを確認して、開閉ボタンからそっと手を離して、扉が閉じられていく。

この間Aは音羽の方へ視線を寄越していたが、音羽と視線が交わる事は一切無かった。





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『エレベーターに音羽さん達が閉じ込められたって本当ですか？！』

「A！」




AのスマホにMERの出動要請の連絡が来たのは、音羽達とエレベーター前で鉢合わせてから5分も経たない頃だった。


看護業務に戻る際に持ってきていたユニフォームを片手にロビーを走っている他のメンバー達と合流する。


危険対策室からはエレベーターの中に音羽さんと、初老の男性・天沼夕源民自党幹事長と、涼香さん、36週の妊婦の立花さんが乗っていると、メンバーに伝えられた。



「………もしかしたら音羽先生の罠だったかも。貴方が身内を救う為に過剰に反応したとか何とかで、MERを潰そうっていう魂胆…。」



赤塚知事の言葉に一瞬耳を疑う。
そんな、まさか、音羽さんがMERを陥れるなんて。



『そ、それは違うと思います。私偶然涼香さんがエレベーターに乗るところ居合わせたんです。天沼さんが乗り合わせるのを渋ってて、それで私が涼香さんに乗せるように頼みました…。涼香さんを閉じ込めてしまった原因なら私にあります……！』


「…大丈夫、Aさんのせいじゃないですよ。」



『喜多見先生………。』

「兎に角、邪推は止めましょう！救急が先決ですから。駒場さん、状況は？」


駒場さんによると、天沼幹事長の出血も治まり涼香さんも妊婦の立花さんも音羽さんも無事が確認できたらしい。



「___MER、了解です。待機しますね。」


「…音羽先生、本当に罠なんか仕掛けようとしてたんですかね？」


「少なくとも大物政治家に恩を売りたかったんじゃないスか？…あの人、官僚ですから。」



『………。』

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