不器用な彼と奥手な私

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『赤タグの患者はこれで全員搬送完了ですね。』

「黄色タグも全員の処置を終えたと報告が。」




緊急対策室からの要請が出た私達の行動はそれはもう驚く程に早かった。

すぐに会議室を飛び出し事故現場へと向かう。
気が付けば同じ会議室に居た千住さん達を含めたレスキュー隊も医療機関も警視庁も、あの場に居た厚生労働省大臣達を除く全員が、現場の対応にあたる為に動いていた。


「何とか乗り切りましたねぇ。」

「ええ。」



誰もがひと息つけると、そう思った時。


生い茂った林の向こうで大きな音と共に煙がもくもくと立ち上がっていた。
それは…誰もが想定していない爆発だった。

それを見た喜多見先生がすぐ様に走り出し、それを追いかけるように皆一斉に走り出す。


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作業現場前に辿り付くとその前にはレスキュー隊が。
千住隊長によれば最終確認を行っていた隊員が中に、そしてその隊員と連絡が取れないとの事だった。

どうなるか分からない状況で現場は一旦待機を命じられ、私達もどうすればいいか分からない状況の中。

喜多見先生がミンさんが持っていた救助バッグを奪い取って中に入っていこうとする。



その姿を見た音羽さんがすかさず彼を止めに入った。


「いい加減にして下さい…！！レスキュー隊も諦めてるのに医者が行くなんてありえません。」

「怪我で苦しんでる人がいます。」

「……もう死んでるかもしれない。」

「生きてるなら、医者の力が必要です。」




「…………綺麗事ばかり言わないで下さい！！！！！


そりゃ、理想だけ追いかけられれば最高ですよ。
だけど現実はそんなに甘くない。諦める事も必要なんじゃないんですか。」


「…俺は、諦めたくない。」




私の音羽さんの初対面の印象は、どこか物事を淡々と俯瞰で見ているような人、そう思っていた。

何事にも冷静で、動じない。そんな人だと。

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