不器用な彼と奥手な私

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ERカーの中では、危機管理対策室から送られてきた映像を元に喜多見先生が指示を行っていた。



「Aさんと夏梅さんはAEDと点滴ラインと携帯用エコーを用意してください。あと蘇生セットも。」


『了解です。』


喜多見先生が各々に指示をしている声をイヤーマイク越しに聞きながら、ERカーは現場に到着したようだった。









素早く車から降りて現場の様子を見る。
既にレスキュー隊が到着していて、横転したバスの乗客の救助に取り掛かっていた。


画面で見た以上に凄まじい現場の様子を、喜多見先生の判断で次々と追加で指示を出していく。




元一が用意したストレッチャーが到着し、喜多見先生の掛け声と共に走り出す。






「比奈先生、タグ付けする時に処置内容忘れずに。

夏梅さん、赤タグの人から血圧測って下さい。
Aさんサチュレーションも同時に行ってください。」


「『了解です。』」






バスの近くへ行くと喜多見先生はそのままレスキュー隊の隊長らしき人へと駆け寄った。



話している内容を聞くと赤塚知事のポイント稼ぎだと思われているMERを良く思っていないらしく、私達医療従事者は邪魔だと、そう言っているようだった。



余りいい気分はしないその発言に、喜多見先生は表情はそのまま隊長さんに詰め寄る。




私達がその様子を見守っていると、バスへの侵入口が確保されたらしく、それを聞いた喜多見先生が制止も振り切り中に入り込んでいってしまった。





『あっ！』

「嘘でしょ…」




暫くして、バス内でトリアージを行っていた喜多見先生が1人の女の子を抱えたまま出てきた。その横には不安そうに泣きそうになっている女性もいる。どうやら抱えられた女の子の母親らしかった。




「心停止。」




喜多見先生のその一言で、私達の空気がガラリと変わる。ストレッチャーに女の子を乗せるとすぐ様救命処置が開始された。

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