渡瀬未友 2 ページ10
幾度となく同じ「夢」を見る。
恐らくそれは夜中の内にバックアップとゴミ取りをしているときに再生される「記録」に過ぎないのだろうけれど、例えるなら「夢」になるはずのもの。
このことは誰にも言ったことはない。
誰かに言うつもりもない。
魘されもしない、淡々と起き上がる私に構う人なんて、いないと思っていた。
真っ直ぐな手は綺麗だ。
雫。
雫は本当なら、研究生の誰よりもキララの輝きに近いはずなのに。
いつも他の誰かのために動いていて、私は一度もあったことはない彼の人を思い浮かべる。
奏。
奏の目指している場所は、周囲の期待している場所じゃない。
もしかしたらそれは「私」と似ているかもしれない、と思ってしまった。
希望。
希望はとことん真っ直ぐで、痛くないはずの胸が痛い。
きっと知らないうちに、憧れに近付いているからだ。
……綾菜。
綾菜は──綾菜のことは、わからない。
何故私にここまで好意を寄せられるのか。
私は時々、綾菜に誰かの影を見る。
それは私の「知っている」人なのか「知らない」人なのかはわからない。
少しだけ──少しだけ、時が経つのを疎ましく思った。
「私」の人格形成は「完璧」じゃなかったのだろうか。
「私」は一体「どこ」を目指すのが正解なのだろう。
光の柱を落ちて行く。
心のどこかで、安心したように誰かがソファーに座った。
あれは誰だったのだろう。
これは私の、存在意義を探す旅。
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作者名:桜野ユウ | 作成日時:2018年10月15日 22時