園崎麻友 2 ページ15
忘れない、忘れられない、小学六年生の学園祭。私はクラスでの出し物の為に校舎の裏に行った。危険な部外者はいないと、勝手に信じ込んで。確かに、部外者はいなかった。
中等部の制服に──それは女の子の制服だった──囲まれた、その光景が目に焼き付いている。身体をぐちゃぐちゃに触られたことも、震えるくらい覚えている。怖くて、目が開けられなくて、声も出なくて。異性だろうと同性だろうと警戒しなきゃいけない──そのことをはっきり理解した瞬間だった。
でも、一番覚えているのは──。
身体を触られなくなって恐る恐る目を開いたときの、囲んでいた人たちが地面に倒れて、それに見たこともないくらい冷たい目を向けながら肩で息をしている、彩ちゃんだ。相手の鼻血とかも付いていたけれど、間違いなくその時の彩ちゃんは綺麗だった。
麻友、って私の名前を呼んだ声は、その目に似つかわしくない、優しい声だった。ゆっくり寄ってきて、いつもみたいに私をぎゅってした。
彩ちゃん、って私も呼んだ。涙は出なかった。
彩ちゃんは綺麗だった。
その日初めて、肩の上で髪の毛を切った。床に落ちた髪の毛を、酷く穢いと思った。
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作者名:桜野ユウ | 作成日時:2018年10月15日 22時