冬プロアイドル小説置き場 (ページ2)

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承和ミオン　１ページ2

父親は、酷いDV野郎だった。
今ならそうやって割り切って言える。早々に愛想を尽かして離婚した母親の決断は素晴らしいし、間違っていないはずだ。

私の記憶の中の父親は、いつも怒っていた。
ヒモ夫とでも言おうか、家に居るかパチンコ店に行くかしかしていなかった。「酒くれ」「金くれ」と欲しがってばかりで、自分では稼ごうともしない。そして、もらえないと私や母親に暴力を振るうのだ。典型的なクズだった。
幼稚園に入り、私の顔や腕、脚の痣に怯えて同級生たちは近寄ってこなかった。先生ですら私を避けていた覚えがある。だから、母親以外とまともに会話したことがなかった。親戚もいないのか？答えは、ほとんどYes。父親の暴力的な性格は元来のものらしく、とっくの昔に勘当されていたと母親に教えられた。母親自身は兄弟姉妹がいなくて、両親が亡くなっていた。
ある日、幼稚園から帰ると母親が荷物をまとめていた。
「逃げるわよ、あの男から」
何も考えずに頷いた。自分の部屋に行き、お気に入りの本を三冊、それと毛布だけ持って鞄に入れた。そして逃げた。行先は母親の友達の家。その友達は私たちを見て開口一番「よく頑張ったね」と言った。多分、私も母親も顔に大きな痣が出来ていたからだろう。その日初めて、殴られない夜を過ごした。