嘘の天秤 ページ15
次の日、朝起きて部屋から出ると、左隣の少女が声を掛けてきた。
「ごめん、ちょっとお腹の調子が悪くて。今日はレッスン休むって伝えてくれない?」
「あ、うん。大丈夫?」
「うん。大丈夫だよー」
ひらひらと手を振って、また部屋に籠ってしまった。
食後、ツバサにその旨を伝えると、一瞬顔を顰めた後「……分かったわ」とだけ呟いた。そのままレッスンが開始される。
「おりゃああああああ!」
まずはロボット相手の訓練。気迫満点の綾菜の掛け声に思わず身体が硬直する。ロボットの腕が目の前に迫り、ひゅっと喉から変な音がした。が、さっとその腕が引っ込んだ。見ると、奏が腕を掴んでいる。その隙に、思い切って脛に蹴りを入れ込んだ。足を掬われてロボットが転ぶ。
「ナイスアシスト!」
ゆいはんの声が飛び、綾菜がガッツポーズした。
昼休憩になり、気になったので寝室に戻る。
「大丈夫?」
部屋に声を掛けるが、返事はない。
「……何してるの」
後ろから声を掛けられた。どきっとして振り向くと未友だ。後ろから覗き込んで「……そこ、誰もいないけど」と呟く。よく見ると、部屋の扉がわずかに開いていた。そっと覗いてみると、確かに誰もいない。
「どこ行ったんだろう?」
ロビーに行ってみる。
タタン、とリズミカルな足音が聞こえた。足音の主は「Beginner」を踊っている。そしてそれは、
「……体調、大丈夫なの?」
左隣の子だった。
「え?ああ、大丈夫。調子よくなったから体動かそうと思って」
視線を逸らしながらそう言うのを見て、確信した。あれは、嘘だ……。
最初から体調なんて悪くない。レッスンを休むための口実だったに過ぎない。
「……お大事に」
けれど、未友はそれをそのままにした。
立ち去りながら、雫は未友に尋ねてみる。
「あのままでいいのかな?サボり、だけど」
「……本人がいいなら、いいんだと思う」
相変わらず無表情で、けれど言葉の端に少しだけ何かを滲ませながら、未友が呟いた。
次の日。「体調不良」の子が三人に増えた。
その次の日。「体調不良」の子が五人増えた。
「全く……」
誰々が体調不良で休みます。その言葉を連続で聞いたツバサが、吐き捨てるようにそう言う。ツバサも薄々気が付いているに違いない──彼女たちが本当に体調不良なわけではなく、レッスンをボイコットしていることを。
「……そろそろちょっと怒っちゃいそうだよね」
希望が、そう呟いた。
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皐月(プロフ) - 桜野ユウさん» 今、更新された話を読みました(^ ^)めっちゃ!読みやすいです!こちらこそ、改良ありがとうございました!! (2017年12月31日 0時) (レス) id: 1dab25db87 (このIDを非表示/違反報告)
桜野ユウ(プロフ) - 皐月さん» ちょっと改良してみました…やればできるもんでした。確かに、間隔をあけると自分でも読みやすいですね…ありがとうございました!(*^ω^*) (2017年12月31日 0時) (レス) id: e618dfe310 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - 桜野ユウさん» いい感じの改良をお願いします(^ ^)長文ごめんなさい。m(_ _)m (2017年12月30日 22時) (レス) id: 1dab25db87 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - 桜野ユウさん» 間隔を空けることに関しては、そういう事になりますね。私は…なんですけど、少し間隔が開いていた方が読みやすいです。間隔が開いてないと、どこまで読んだのか分からなくなりますし…。けど、意見を押し付けるわけじゃないんで^^; (2017年12月30日 22時) (レス) id: 1dab25db87 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - 桜野ユウさん» お返事ありがとうございます(^ ^)まさか、お返事がもらえるなんて思ってなかったので嬉しいです!希望のキャラクターの研究、お疲れ様です!その研究が、希望のキャラクターにちゃんと活かせてると思います!! (2017年12月30日 22時) (レス) id: 1dab25db87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜野ユウ | 作成日時:2017年12月8日 19時