嵐の夜には ページ11
空気が、一瞬にして変わった。
その圧倒的なオーラと佇まい──雫と智恵理は同い年のはずなのに、気圧されて思わず後退った。
これが、センターノヴァ。
「こんにちは、候補生の皆さん」
「こんにちは……」
微妙な間が出来てしまったのは、皆も気圧されているからだろうか。
「私も一年前、皆さんと同じようにセレクション審査を受けました。今となっては懐かしいです」
一年でセンターノヴァに上り詰めたということだ。雫は智恵理を凝視し、そして気付いた。横に何か浮遊している……?
「私からは二つだけ。一つ、真面目に訓練に取り組むこと。もう一つは」
そこで悪戯っぽく笑う。幼い子どものように。
「ちゃんとご飯を食べること。以上です」
本当にそれだけで、智恵理は出て行った。横に浮遊していた「何か」も一緒に。
「……不思議な人」
隣の未友が、ぽつりと呟いた。その声も、低すぎず高すぎず耳に心地好い。それに同意するように、しばしの静寂が訪れる。
だが、誰かがそれを打ち破った。
「真面目に訓練に取り組むことって……こんなことするって聞かされてなかったし」
それを皮切りに、一日の不満が噴出する。
「そうだよ。いきなり戦うって」「こんなことのためにオーディション受けたわけじゃない」「アイドルのすることじゃないでしょ?」
雫はそうは思わないのだが……騒がしさに、目と耳を塞ぎたくなったその時──。
「……うるさい」
未友が、はっきりとそう言った。しん、と声が止む。
「……そう思うなら、そう思っておけば。……私はそうは思わないけど」
ちらり、とこちらに目線が来る。何かを確認するように。
そのまま、未友は部屋の扉を閉めてしまった。後には、なんとなく気まずい空気が残された。
「ねえ、ちょっとだけ散歩しない?」
綾菜の誘いで、雫と希望、奏の四人で廊下に出た。
「……さっきの、どう思う?」
奏の問いは、未友の言葉に対してだ。
「たしかにセレクションがこんなとは聞いてないけど。たたかうことくらいわかってなかったのかな。00なんて、体力ないとやってられないよね」
希望は、全面的に未友の考えを肯定した。雫も概ね希望と同じで、頷いて見せる。
「……私、どうしても怖いと思うよ。戦闘なんて」
奏はぎゅっと拳を握りしめた。
「メンバーの皆さんを護れるのは、結構嬉しいけど……」
綾菜の中では、どちらの意見も競り合っているようだ。
「……あれ、何か音が聞こえる?」
奏が、耳を欹てた。
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皐月(プロフ) - 桜野ユウさん» 今、更新された話を読みました(^ ^)めっちゃ!読みやすいです!こちらこそ、改良ありがとうございました!! (2017年12月31日 0時) (レス) id: 1dab25db87 (このIDを非表示/違反報告)
桜野ユウ(プロフ) - 皐月さん» ちょっと改良してみました…やればできるもんでした。確かに、間隔をあけると自分でも読みやすいですね…ありがとうございました!(*^ω^*) (2017年12月31日 0時) (レス) id: e618dfe310 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - 桜野ユウさん» いい感じの改良をお願いします(^ ^)長文ごめんなさい。m(_ _)m (2017年12月30日 22時) (レス) id: 1dab25db87 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - 桜野ユウさん» 間隔を空けることに関しては、そういう事になりますね。私は…なんですけど、少し間隔が開いていた方が読みやすいです。間隔が開いてないと、どこまで読んだのか分からなくなりますし…。けど、意見を押し付けるわけじゃないんで^^; (2017年12月30日 22時) (レス) id: 1dab25db87 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - 桜野ユウさん» お返事ありがとうございます(^ ^)まさか、お返事がもらえるなんて思ってなかったので嬉しいです!希望のキャラクターの研究、お疲れ様です!その研究が、希望のキャラクターにちゃんと活かせてると思います!! (2017年12月30日 22時) (レス) id: 1dab25db87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜野ユウ | 作成日時:2017年12月8日 19時