No.14 ページ17
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『……貸してくれるのですか、くれないのですか?』
承「それはお前次第だぜ、A。」
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こうなった経緯はAが承太郎の元を訪れた所から遡る。
教科書を忘れてしまったAが承太郎に借りに来たのだが…
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『承太郎くん、数学の教科書を貸してくれませんか?』
承「あぁ。良いぜ。」
承太郎は自身のロッカーの中から教科書を取り出し、Aに差し出そうとした。が、ふと脳裏に考えが浮かんだ。
『……?』
教科書を手に持ったまま、渡す素振りを見せない様子に
Aは首を傾げる。
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そして現在に至る。
『……貸してくれるのですか、くれないのですか?』
承「それはお前次第だぜ、A。」
訳が分からないと言いたげの表情を浮かべるAに承太郎は口を開く。
承「…条件がある。」
『条件?なんですか?』
承太郎はピシリとAの方に人差し指をさした。
承「俺が聞く事に正直に答えるなら貸してやる。」
予想していなかった条件にAは唖然とした。
『態々こんな事しなくてもちゃあんと答えますよ…。
で、何ですか?』
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承「…なんであの時………」
『あの時?』
少し不満そうに承太郎を見上げるAはそれより先の言葉を催促したが、一向に喋る気配はなかった。
承「…いや。やっぱりいい。忘れてくれ。ほらよ。」
『…?そうですか。有難う御座います。』
Aは不思議そうに承太郎を見たが、授業の時間が迫っていた為自身の教室に戻っていった。
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承「………。」
あの後、承太郎は授業を受ける気も起きずいつもの様に屋上でふけていた。
ごろんと寝そべり、空を見上げる。雲の流れが速い。
承太郎の脳裏にはAの顔が浮かぶ。
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承「…何故…アイツは…。」
承太郎は考えるのをやめた。
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6月下旬。梅雨もそろそろ終わりを迎え、夏がすぐそこまで来ている。
梅雨前とは違う、少し暑さを感じる日差しにゆっくりと目を瞑る。
少し生ぬるい風が承太郎を包んだ。
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千夏 - 二人の距離感がすごく好きです。無理のない範囲での更新、楽しみに待ってます! (2022年5月18日 18時) (レス) @page17 id: 86c828af75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽんで | 作成日時:2022年1月12日 1時