46本目 ページ48
硝子side
去っていった夏油を見ながら昔のことを思い出した。
葵は、奇跡的に私たちが2年生になった夏前くらいまで生きていた。
葵の気力と、私たちの願いが届いたのかもしれない。
後輩である灰原と七海にも慕われ、優しい笑顔をよく見た。
2人と夜蛾先生には事情を話した。
任務を少なくしたり、体調によって調整してくれたりした。
灰原も七海も病気のことは関係なく接してくれていた。
葵が笑っているだけで柄にもなく嬉しく感じていた。
だが葵の綺麗な声は、目は、笑顔は、全て奪われていった。
命日となる日の一ヶ月前に喉の辺りに咲いた花により声が奪われ、次の日には左耳付近に咲いたことで片耳が聞こえなくなってしまった。
その次の日は右耳に咲き、声も耳も奪われた。
私たちは筆談でコミュニケーションをとっていたがしばらくしてそれも難しくなった。
手には花がたくさん咲いていて動かすのは難しくなっていたし、病気の進行が顔の辺りまできていてその時はもう直ぐなのだと気づいてしまった。
鎮痛剤もとっくの昔に効かなくなっていたし、最後の1週間は術式を使わないと立てないほどになっていた。
代わりに強くなっていく術式によって葵は命日2週間前に特級へと昇進していた。
葵にとって、私たちにとってそんなものは意味のないことだった。
私はよく部屋に通い、あの馬鹿どもの話をしたり色んなことを喋って葵の横にいた。
葵は読めるのもやっとの字である日私に一枚紙を渡した。
ーいつもありがとう。
本当に楽しくって動けなくても幸せだよ。
硝子は一生親友だよ。私のわがまま聞いていくれてありがとう。
友達になってくれてありがとう。
幸せになってほしい。
私が死んだら棚に入ってる手紙みんなに渡してほしい。
最後までわがままいってごめんー
綺麗な葵の字は見る影もなく歪んでいて、その一枚の紙を握りしめ、柄にもなく彼女の横で泣いた。
命日の前日、葵は五条と海へ行ったらしい。
嬉しそうだったと五条は悲しげに笑っていた。
葵と昔、4人で海に行った。
ふざけて水を掛け合っていた五条と夏油を見ながら、不意に葵は海が好きといった。
五条の眼みたいだからだそうだ。五条には一生教えてはやらない。
五条のくせに葵を独り占めしてるから、これは私と葵だけの秘密だ。
私の親友、ずっと一緒に居たかった。
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sakura(プロフ) - ナミさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです!すみませんがまだ完結ではないです!あと2話ほどあるのですがリアルが忙しく更新できていません。大変申し訳ないです。更新頑張るので最後まで読んでくださると幸いですm(__)m (2023年4月25日 21時) (レス) id: a3c54e5b97 (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します。すごく面白いです!泣けてきました😭 質問ですが…,これって完結ですか?続きますか? (2023年3月24日 23時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
sakura(プロフ) - あやのすけさん» コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張りますo(`^´*) (2022年9月4日 9時) (レス) id: a3c54e5b97 (このIDを非表示/違反報告)
あやのすけ(プロフ) - 初めまして。とても面白くて更新が待ち遠しいです!陰ながら応援しております! (2022年9月4日 0時) (レス) @page16 id: dd85cdea1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sakura | 作成日時:2022年8月27日 20時